バレンタイン企画〜情熱の嵐2009

□《WILD_LOVE 〜Freeze Frame》
2ページ/3ページ



「『Saint Valentine's Day』……またタイミングよくカードなんざ添えたモンだぜ」

「タイミングも何もない。本日はその日だ」

「クッ!ならば…オレの元に宅配便で届けられた『愛』について―――言い訳のひとつも聞きたいんだがなァ……」

「……………」


どうやら神ノ木は、バレンタイン菓子を直接手渡さずに宅配した事を根に持って此処に来たらしい。
局長と昼食を兼ねた打ち合わせ後に30分程の外出許可を得て、成歩堂にだけは何とか手渡す事は出来たのだが、神ノ木までとはそう簡単にはいかなかったのだ。


(その嫉妬深さも7年前から足踏み状態とは……)


言葉を選ぶのに暫く黙していると突然、神ノ木のゴツゴツとした手に腕を取られる。
貴様、何を…!―――そう言いかけた時、カフェの入口に政界人の秘書らしき者と局長の姿が視界の中に入ってきた。

その刹那に腕を思いきり引かれ、身体は無理に立ち上がる。
神ノ木は万札をソーサの下に挟み込み、事もあろうに私の腕を掴んだままいきなり走り出したのだ。


「釣りはチップだ、Boy?」

「は……?はぁ…」

「……痛ッッ!!止まれ、神ノ木ッッ!!!」


制止を促した声に、局長 は満面の笑みを浮かべながら、天に向け人差し指を弾く。
すると、ロビーの四方からSP達が飛び出してきて、こちらへと向かってきた。

エントランスを抜け、神ノ木の腕に引き回されるようにしながら外へ出ると、対のグリフォン像が立ち列ぶ陰に隠された無人のバイクに突如エンジンが掛かり、軽快な回転音を響かせた。


「クッ!チョイとした逃避行、付き合ってもらうぜ?」

「何という馬鹿げた………ふッッ!!」

「足りねェ時間は生み出すモンさ……Honey?」


全てを吸い尽くすような荒々しいキスに、上がった息を補う呼吸さえ奪われてしまい、酸欠で意識が落ちそうになる。

抵抗できぬ身体は背後より抱かれたままに、神ノ木は他愛もなくバイクへと乗り上げる。


「イイコにしてタンクにしがみついてな」

「……ッ……ま、待て……神ノ―――」

「スタートの早さはポルシェを越えるからなァ………」


ドルン!と腹綿に響く重振動と共に、身を切るような加速が闇を裂く。

背後からクーペが追って来るが、大通りから細い 路地へと侵入したバイクを追う事は敵わず。

やがて腰を抱く神ノ木の手に支えられ、ネオンの森を抜け出していった。


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ