バレンタイン企画〜情熱の嵐2009

□『Baby…Come around』
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【Baby…Come around】
〜Until its moon melts






日本国内で消費されるカカオの約半分はこの月なのだという。
元々は製菓業界の安直的発想の賜物だが、今や国民的イベントといった類いにまで定着下している。
米一粒にも神が宿ると云われるこの国で、今日のコイツも単なる祭の一種に過ぎない。

つまり……《無宗教無信徒派クオリティ・旨味ピックアップのビジネスライク祭》といった所だ。


「で……ボウヤはコネコちゃんに今年は何を贈ったんだい?」

「……プライベートな事を貴様に答える筋合いなぞない」

「まァ……昨年みてェな緊急事態を懸念する余り、今年は早朝1番に届けたんだが……夜更かしでまだおネムだったコネコちゃんを起こしちまい、玄関先でチョイと尻尾を曲げられた―――」

「……ストーキング行為であると告発すれば、貴様なぞ直ぐに実刑だ!」

「…クッ!!盲目スイングでホールインワンしちまったぜ……」


そんな祭が今年は土曜に当たった。
しかし、土日祝祭日には基本『休日』というセオリーのない検事局は、今年も盛大にチョコレートが飛び交っている。

ソイツに一々付き合う事となれば、その薄い唇を奪う暇すら失ってしまう。
ならば……何か上手い出向を作り出すこと―――とある案件の一部にチョイとした資料不備を見付けたオレは、ソイツを旨く利用する事にした。

そのお陰で、今年はこの地裁資料室に二人きりといった状況を作り出す事が出来たのだ。


「しかし、一部とはいえ最重要箇所の資料が抜け落ちているとはな………」

「ツイてねェ……そう思っちまったかい?」

「やはり、早朝を選択した判断は正しかったと思っただけだ」


ボウヤは職務に関するものに対して不平不満を漏らすような事は決してしない。

勿体ないが騙し良い……そんなボウヤの生真面目な完璧さを心中ほくそ笑みながら、静まり返った室内でゴーグル越しにその顔を眺めていたのだった。


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