バレンタイン企画〜情熱の嵐2009

□【Rock'n'-Rose】
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〓 Rock'n'-Rose 〓
〜Give me Chocolate!!〜






「僕、結構甘いものとか好きなんですよ」

「……それが一体何だと言うのか、牙琉響也」

「ヒントは【2.14】、カトリックの祭日なんですけどね」


―――7年前。

回りくどい上に執拗だったのは、あの奇妙なセクハラ・マスカレードだった。


それから、7年後……。

神ノ木は既に検事局を自己退職し、とある広域指定暴力団の頂に立つ者となっていた。
故に、立春を過ぎた頃よりの毎年恒例的な猛アピール劇から漸く解放されたな、と思っていたのだが。

残念な事に、7年を経た検事局には、とあるダーク・ホースが潜んでいたのである。


「最近では『逆チョコ』なんてのもあるらしいんですけど」

「だ か ら 何 な の だ ……!」

「ハハッ、僕は否定派ですから」


わざと言葉に僅かな間隔を空け、この苛立ちを表現しているというに、この《牙琉響也》は全くもって、空気を読まない男であった。

神ノ木を『オレ道を行け、わからねぇなら実力行使』タイプとするならば、響也は『意図に気付くまでバレバレのストーキング=インフェルノ』といった感じである。
どちらも実に始末が悪い事に変わりはない。

いや、寧ろ響也の方がタチが悪い状況に思う。

何故なら、局長から『余り虐めるな』と言われている上、半分は師の遺伝子を持ち合わせているのだと思うと、神ノ木の時のように眉間を皺立たせ罵倒を浴びせる事が出来ない分、ストレスは溜まる一方であるからだ。

ある時、兄である霧人が【響也には時折無性にイラッとするのですよ】と話した意味がよく理解出来る。確かにこれでは、兄でなくとも苛立つ。

イジメ問題には大概、虐めた方が非難されるケースが多いが、虐められる側にも落ち度があるという説があるという。
響也とはそれの典型的なケーススタディなのではないのか、等と最近になって思うのだ。


(私の人生とは、謀事の路なのではないだろうか……)


響也の言う【2.14】――それはつまり、バレンタインデーの事だ。

基本的に成歩堂へは必ず渡すとは決めていた。先程まで、今年は何が良いだろうかと真剣に考えていたのだから。

しかし、その日が近付くにつれ今度は響也が毎日同じ位の時刻に現れ、バレンタインデーに関する遠回しなあれこれを無駄語りにやってくる。

このオープンな自己主張劇の日々に、結局はストレス性胃炎となり―――薬を服用する午後3時にこうしてやってくるのだから、 憤慨の緒も切れかかっていた。

バレンタインを明日に控え、副局長室に粘り腰の様相を見せる響也に困り果てていると、ノックも無しに突然ドアが開く。

そして、またキリキリと胃袋が痛んだ。


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