1周年企画部屋≫2
□『夕凪』
1ページ/4ページ
===========
≡夕凪≡
〜Turn back this moment
===========
「チョイとブレイクしていこうぜ、ボウヤ?」
午後に入った現場への緊急要請を終え、局へと戻る途中の事。
助手席で車窓から外を眺めながら煙草を弄びつつ、不意に神ノ木がそう尋ねてきた。
多少長引くかもしれぬと思い、余裕を持たせた帰還予定時刻を受付に告げていた為か、約1時間程の余白が出来ている。
尤も、現場で神ノ木が各配置員へ適確な指示を出した事が、その余剰時間の全てだったのだが。
本日は仕事の残留も少なく、またその余剰の功績が神ノ木にあったという事もあり、その申し出に同意したのだった。
「クッ!今日は随分と物分かりがいいなァ、ボウヤ?」
「ム……今回は特別だ。毎回そうと思われては困るので、先に釘を刺しておく」
「中々に手厳しいボウヤ……嫌いじゃないぜ?」
海沿いを走る先に小さなカフェを見付け、ウインカーを点灯させた。
数台の車輌が駐車する敷地内にスープラを停め、車内から降り立つ。
潮の香りが春風に乗り、穏やかな海景色が眼下にと広がった。
「オープンスタイルも有りとは……偶然とはいえ、中々に良い場所ではあるな」
「次はコネコちゃんを誘うって寸法かい?」
「そうだな……後程、ナビにメモリーしておく事としよう」
相変わらずつれねぇボウヤだと…愉快気にそう呟いた神ノ木は、無人となった隙を狙いフレンチ・キスを仕掛けてきた。
咄嗟に身を引くものの、その狙いを回避出来ずに唇が重なる。
「クッ!嫉妬させられちまった代償、確かに受け取ったぜ?」
「貴様の嫉妬なぞ知った事か!!」
「まァ……オレにとっちゃ一種の持病とも言えるんだがなァ……」
くつくつとした笑いを漏らしながら神ノ木はカフェ内へ入り、店内最奥のバルコニー席へと向かっていった。
.