1周年企画部屋≫2

□〓Bacchus!〓
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 〓 Bacchus!〓
〜とある神の領域〜






毎回の事とはいえ、成歩堂の酒癖の悪さには頭を痛めている。

自制が効かぬくせに、自分はアルコールには強いからと言って聞かず結局は泥酔し、翌日は二日酔いに悩まされて暇潰しを兼ねて愚図りにと訪れるのだ。

成歩堂が来る事自体は、全く問題はない……いや、寧ろ嬉しい。
ただ、具合の悪い幼子が何をどう宥めてもグズるのと全く同じように、帰り間際までその機嫌は全く直らずに居るのだ。

それは過去を最大限にまで遡り、小学生時代の思い出に残る不満から現在に至るまでの事柄が延々と続く。

そこに毎度の如く神ノ木が現れては同じポイントに同調する。
耐え兼ねて神ノ木に罵声を浴びせれば、成歩堂が拗ねる。
成歩堂を宥めつつ過去への謝罪をすると、再び不平不満の愚図りを再開する。

……と。

こんな無限ループの二日酔い劇に、その日の案件は殆ど手づかずとなってしまい―――そんな中でも、自らの仕事分だけは何故か終えている神ノ木が恩着せがましく『手伝うぜ?』等と笑い、断っても手を出してくる。
そして結局は違った意味での残業まで奢られるというオチがつくのだった。


(かと言って、神ノ木と二人きりになぞ出来ぬのだし………)


『ね、飲みに行こうよ!』と笑顔を振り撒きながら、それは嬉しそうに誘われれば、断り切れるものではない。
また、その誘いの中には必ず神ノ木を含む事が言わずもがなに決定しているのだ。

丁重なる断りを入れても、神ノ木が絡むとなればその身が心配になり、尾行する羽目になる。
それに気付かれたとなれば、翌日の恒例劇に不満節が追加されてしまうのは目に見えていた。


(やはり……何か一計を投じなければいかんな―――)


先程まで来訪していた成歩堂のカップを回収し、来週に約束してしまった『酒の宴』に、傾向と対策を模索しながら御剣は食器洗浄機の前でやや暫くの間、じっと立ちすくんでいたのだった…………。



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