1周年企画部屋≫1

□『水の記憶』
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瞼閉じて
静かに息をするだけで
ふたり

いちばん小さな
輪廻の宇宙―――――






 ―『水の記憶』―
 〜Whisper in a
     deep sea〜






―――成歩堂法律事務所


今日の仕事は大半が終わっていた。
僕の指先は無意識にクルリ、クルリとボールペンを回し続ける。


(メール、送ってはみたけど……)


充電ホルダーに差し込んだままの携帯は、赤い発光体がポツンと光るだけで、うんともすんとも言わない。

メールは、便利なようで意外と不便だなぁと僕は思う。
口じゃ言いづらいような言葉をメールは届けてくれるけれど、その言葉を文字で上手く表現出来なければ、逆に誤解を招く事もあるからだ。

だったら通話で直接伝えた方がまだマシでもある。でも僕の場合は、電波越しですら上手く伝えられない事が多かった。

だからこそ『逢いたい』と願う―――想いを寄せる人であるから、尚更に。


(分かってるじゃないか……忙しい、って)


検事局長の仕事もさる事ながら、片や政財界の会合等もあり……あの人のスケジュールは正に分刻みである事を知っている。

でもどうしても逢いたくて、時には僕自身がその『時間』の代償となる時だってあるのだから。

メールならば、移動中の僅かな合間に読んでくれるかもしれないとか……ささやかな淡い期待も密かに込めて送信してから―――早4時間だ。


「結局、同じ事ばかり繰り返すんだなぁ……僕」


未だにクルリ、クルリと回し続けるボールペンも、僕のこんな行動も。

想いが伝わらなくて泣いた黄昏れも、想いが通じてしがみついた夜も……精神が大人になりきれない自分に、また深い溜息をひとつ、ついた。
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