驚愕20蔓打サイト企画〜お題スペシャル≫1

□【I…I love編】#3_『The Selfish Gene』
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【I…I love】
  EPISODE_#3
〔The Selfish Gene〕






結果はごく自然な流れといったモノで、それ自体に余り面白味はなかった。

携帯から、つらつらとした経過を告げる声を聞き流しながら、ソレは多分あの時の後遺症だね、と独り言を呟く。


「ン?…ああ、キニシナイでくれてイイよ。独り言は歳のせい、だからさ―――」


7年前、彼はまだまだ若いモーゼだった。

割れた海の先に繋げようとした路は、その力及ばずに海の藻屑と消え果て―――結果、『逃れ』という答えの方舟を蹴り飛ばした神ノ木ちゃんは、十字架よりタチの悪いモノを背負う羽目になった。

離れる筈がない、という絶対の自信は突き崩れ。

見捨てられる訳がない、という一途さを踏みにじられ。

慈愛の陰に抱く痛みは昇華出来ず、哀れに朽ちて病んだ。


「……じゃあ、また後から連絡するよ。考える時間とか、イロイロとあるからさ―――」


破戒の後に残るモノ達がそれぞれの再生を果たすには、かなりの時間を要した。
尤も、ボクはソレなりの不可欠な時間が必要だった。そしてこんな運命の予見も、何ひとつ変わってはいない。

ただ……唯一、誤算はあった。ソレは、あの蒼いコの『純粋さ』だ。



【僕は逸れてしまっただけだって……そう信じる事しか出来なくて―――】



ボクにすら読み切れなかった、あの透明なココロ。あのコに係わった者達全てが、何かしらの変貌を遂げているという不思議な事実。

成歩堂 龍一……この出会いは運命なのか。
それとも、知らず知らずの内に、ボク自身が惹かれてしまっていたのか。


「あの、絶望の、蒼に――――」



不意に、ボクは思い出していた。
5月の、日曜の、晴れた、青い空を。

そしてまたチョッピリ、悪意ある興味が芽吹き始めている。

ボクと共通する利己的な遺伝子の育ち具合………神ノ木ちゃんに贈る、愉快なゲームなんかを。


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