WALL-BAR

□Chameleon Dynamite
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「マジ冗談抜きで遅刻しますよ、成歩堂さん!!」

「ゥン……あと1時間………」

「5分も厳しい中で1時間て……駄目です!無理ですから絶対!頼むから起きて下さいよ!!!」

「………ちぇっ」



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『Chameleon Dynamite』
〜ONCE,TWICE,I'LL TRY〜

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「ふぁあ……いってきまふ………」

「成歩堂さん、書類忘れてますよ!!手に持ってるの、それ雑誌じゃないですか!!」

「――二ツ折りするといい夢見れる厚さなんだけどなぁ……」


委員会のある朝は、決まってこんな感じだ。
オレの職場は、成歩堂さんの自宅兼事務所となっているから、毎週水曜日は早目に出勤して目覚まし代わりとなっていた。

大概が重役出勤並に起床する成歩堂さんだから、起こすのには骨が折れる。
毎朝欠かさない発声練習は、水曜日に限りこれに変わっている位だ。


「それと、もし良ければこれも。朝食変わりに」

「へぇ…。あ、ホットドックだ」

「地裁に着いたら、会議前にパパッと食べれますから。ピクルス増量してあります。目が覚めますよ」


書類と一緒に渡した紙袋を早速開ける子供のような、その様子。

そこで非常に嬉しそうに笑うものだから、最近はこんなデリバリーまでも熟していた。


「オデコくんは、いいお嫁さんになれるね」

「いや〜それ程でも……って、いやいや!オレは嫁を貰う方ですよ!!」

「うーん……もう少し大きいと嬉しいなぁ、ソーセージ」

「って……食いながら行く気かよ―――」


書類を小脇に挟み、成歩堂さんは早速ホイルを剥いている。
早く行かないと遅れますよと出発を促すが、そのマイペースさは全くもって変わらない。

変わらない上に、非常に厄介な事も……たまにある。


「あのさ、オデコくん」

「な、何ですか……今度は」


成歩堂さんはドアを肩で押し開きながら、唇に付いたケチャップをペロリと嘗め、ニイッと笑う。

その仕種を見て、目を覚ましかけた将軍様にオレは焦り、妙な体制で聞き返したのだけれど……


「今度ホットドック作る時にさ、ソーセージ…もっと太いやつにしてくれる?」

「はぁ……でもそれじゃフランクフル……」

「ココ位に、ね」

「―――!!!!」


スエットの中心に指先を這わせ、漸く成歩堂さんはペタペタと出て行って。
お約束にも一気にしゃがみ込む、オレ。

今頃に何思春期真っ盛りなんだよ!と、唸りながら自分にツッこむ。
……実に虚しい独り芝居だ。


(くそっ……何時になったら馴れるんだオマエはーー!!)



その背後で、ニコニコと無邪気に拍手をするみぬきちゃんもまた……ありふれた日常の場面。

この親子の無敵さにオレは、とある決心を固めていた。
既に、アポイントも取ってある。


(みぬきちゃんはともかく……成歩堂さんだ、問題は)


自分の将軍様を宥めすかしながら、その決心を再び固め―――暫く間抜けなオブジェと化していたのだった……。


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