WALL-BAR

□序曲5―ETERNAL SOUL
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海も消えて
荒れ果てた大地に一人

静まる空の下で
最期に囁くは
永劫の薔薇―――――






【序曲5】
   ―ETERNAL SOUL






―――あなたは不誠実なピアニスト………



ソレを聞いた時、彼が未だにボクを待っている事が分かった。
最後に残した手紙には、 『またね』と書いた。
それは今でも覚えている。

でも、ザンネンな事に………彼に囁いた『愛シテル』は、ウソだった。
ボクには狩魔クンが居たし、彼から貰った御剣クンが酷くお気に入りだったから。

純粋な蒼のまま、実に臆病なまま……ずっと小刻みに震え、ボクと遊んでくれていたらソレだけで良かったのに。

彼はボクの中に流れる悪い血を嗅ぎ付けて、あろう事かボクの傷口を舐め出したのだ。


(アレは誤算だったなァ………)


彼はこの箱庭に足りない『色』だった。
本格的にホシイと思った時から、実に様々なコトを考え、毎日が愉しくて仕方なかったものだ。

……しかし。

彼はボクにとって『猛毒』でもあった。
それは、過去に捨てた筈の感情を蘇らせてしまう致命的な猛毒―――。


全ての物事から受ける外傷は何れも致命傷ではナイ。
最も致命傷となるのは、血が流れない内側からのキズ、だ。


ボクがソレに気付いたのは、狩魔クンが信ちゃんを撃ち落としてしまった時。一つの世界と時間が閉じた………あの時に。

ソレを捨てたその時からボクには、もう怖いものが無くなっていた。
どこにも根を下ろす事なく、ただ進み続けるだけのフィアレスとなったのだ。


そのお陰で、狩魔クンはボクの手に堕ちて。

そして、去年。
永久にボクのモノになった…………



―――不協和音奏でし
 いとしあなた蘇れ……



機内で聞く、その唄に。
また、内側は毒されるけれど。

窓に広がる大空の海原を眺めながら、ソレが少し心地良いと感じるのは単に歳のせいかもしれないと―――ボクはチョッピリ自分を笑った。


「ボクのオモチャは、ずっと純粋で、尖った蒼い凶器…だね――――」


ボクの築き上げたユートピアに、キミは永遠の迷いを与える『色』。

愛しちゃいないケド、キミもボクの大切なお気に入りだ。


まだ遊ぶ価値が在る愉快な箱庭を目指し、鉄の鳥は空中回廊を飛び続ける。

無口になった狩魔クンと共に――――


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