novel

□キーリ novel
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「・・・ん?」
側を見ると、黒い小さな塊が落ちていた。
何かの欠片だろうか。一応拾って、ポケットに突っ込む。
他にも何か無いかとキョロキョロしていると、荒い息と共に、誰かが入ってくるのが分かった。
さっと物陰に身を隠す。
・・・・・・。

「ユド・・・?ユド、いるなら返事して」
まだ若い女のようだった。『ユド』という人物を捜しているらしい。
誰だろう。何処かで聞いた気が・・・。
はっと思いだし、胸ポケットから血でぐしゃぐしゃになった紙束を取り出す。
今回の「殲滅」での対象になった、不死人の名前と特徴の書かれた簡素なリストだ。

私たち「修羅」と呼ばれる教会直属の部隊は、不死人を「殲滅」するため、一般兵に混じって戦にかり出される。
修羅は教会で何か施されているらしく、一般兵よりも強く、不死人の居場所を感知する事が出来る。
修羅にされる前の記憶は、私には無い。
仲間と共に、不死人を殲滅。それだけが、私の役目であり、存在価値だ。
私たち修羅は自分達の記憶と引き替えに、教会に従事している。

私は血にまみれ所々ちぎれたリストをめくり、No.4の所で目を留めた。
【名:ユド
 特徴:大柄
 追記:黒髪黒目の女】
追記の所は、きっと関わりのある人物だ。不死人に関わって正体を知ってしまった者は、なるべく隠密に、だが確実に殺してしまわねばならない。
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