陽と陰の扉

□☆小さな蕾(未完)
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いつの間にか芽吹いた

小さな小さな蕾

そしれは

強く美しく清らかに……

大きく花開く







「はぁ〜」

文机に突っ伏し、溜め息を洩らすこの少年こそ、あの大陰陽師安部晴明の孫、安部昌浩である。

昌浩は、晴明の命により、今は物忌をさせられている。

理由は、極単純なことだ。

昨晩、晴明の部屋に呼ばれた昌浩は、いつものようにいつものごとく、『昌浩や、ここ最近寺に住み着いた妖がその近くを通りかかった人達を、次々と立て続けに襲っているらしいのじゃ。ちょっと行って祓ってこい』と妖怪祓いに駆り出された。

そこまでは、よかった。
なぜなら日常茶飯事な事だからだ。
だが今回だけは、いつもとは違った。
いつもなら昌浩の護衛に付くのは、もっくんや六合、たまに勾陳や玄武なのだが…………
どいう訳か今回の護衛は、青龍。
もっくんこと紅蓮と犬猿の仲で昌浩にも冷たい態度を崩さない神将だ。

晴明によると紅蓮達には、他にやってもらわなければ事があるらしい。

だがせめて、もう一人護衛をつけて欲しかったと昌浩は心の中で嘆いた。
もう一人、誰か護衛がいればまだこの何とも言えない複雑な雰囲気が拡散されるのではないかと思ったからだ。

「今回の妖は、鼬みたいにすばしっこいらしいから、気を付けないとね」

「…………(チラッ」

「…………;」

「……………」

《き…気まずい…》

妖が現れるという寺に向かう間、重々しい沈黙に耐えかねた昌浩は何回か青龍に話しかけようとしたのだが、どう話しかけてみても無言で此方に視線を向けるだけ。結局、一言も会話のないまま目的地についてしまった。

「ここみたいだね。じぃさまが言ってた寺は」

その寺は、もう何年も人が手を入れていないらしく、蔓が壁を這いずり回り、木は腐り始めていた。

「足手まといになるなよ」

「大丈夫。自分の身ぐらいは、ちゃんと守れるから」
「ふんっ」


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