こんにちは、平助君!

□第壱話
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それは、ある晴れた午後のこと。


「うぅ…」


某屯所前でうつぶせに倒れたまま動かない女の子を発見した俺、藤堂平助は悩んでいた。
…誰だ、こいつ。
俺の足元には薄汚れた着物を着て地面に倒れこんで呻いている女の子が居る。
ぶっちゃけ無視できるものならば無視して通りたいがそうも行かない。
…だって、倒れてる奴放っとくのは駄目だろ?
それにどちらにしろここを通らないと中には入れないのだからと仕方なしに俺は女の子の肩を揺さぶった。

「おーい、お前大丈夫かー?」

すると僅かに指先がぴくりと反応する。
そして次に体がごろりと反転し顔が見えた。

「っ………!」

一瞬で俺の顔に熱が集まるのが分かる。
熱い、そりゃもう今までに無いほどに。
仕方ないじゃんか!
それほどまでにこいつは可愛かった。

「えーと、あのー…」
「ぅ、え、あ、はいっ?!」

いきなり声をかけられて驚いて声が裏返る。
あー、くそ、なんなんだよもう!

「あなたってもしやここにお住みですか?」

なんて屯所を見ながら変わった事を言うものだから思わず顔をまじまじと見詰めてしまった。
…いや、まぁそれも10秒と持たなかったんだけど。

「そうだけど、なにか用事?」

自分でも信じられないくらいそっけない声が出た。
うわ、これってほんとに俺?
内心慌てふためく俺の心情には目もくれずこいつは顔中に満面の笑みを浮かべて飛び起きた。

「良かったーっ!やっと着いたーっ!」

とだけ言ってまたぱたりと地面に転がった。

「お、おい!大丈夫か?どうしたんだよ、お前」
「…かが」
「へっ?」


「お腹が減って動けませぇん…」



 
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