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□些細なことをきっかけに生まれるらしい
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恋、ねぇ…。

「くっだらない」

愛だの恋だの僕はそんなもの信じない。
寧ろ時間の無駄。

特別可愛い女の子、なんて居ないしね。
付き合うのもご機嫌をとるのも正直面倒臭い。
本当、女の子って鬱陶しいんだよね。

「本当、くだらない」

そう呟いて屯所へ続く道の角を曲がった瞬間、

「ぷぎゃっ!」

なにかが僕の肩に当たって跳ね返り潰れた様な声がした。
足元を見ると散らばるお菓子の数々に多少の小銭。
その少し先には鼻を押さえて蹲る小さい子。

「だ、大丈夫?」

取りあえず形だけでも、そう思って手を伸ばす。
すると小さな子はキッとこちらを鋭く睨み、

「大丈夫な訳ないでしょっ!!」

と、小さな体に似合わぬ大きな声で怒声が返ってきた。
少し、ムッとした。
僕も悪いけど、ぶつかって来たのはそっちじゃないか。

「とにかくお金とお菓子を拾わなきゃ…!」

小さな子はそんな僕の態度を気にも留めずせっせと散らばったものを拾い集める。
手持ち無沙汰になった僕は仕方なくその子に習い地面にしゃがみ込んだ。






「これで全部、かな」

大した量じゃなかったのが幸いして拾うのにそんなに時間はかからなかった。
僕は立ち上がり大きく伸びをしてから言った。

「それじゃ僕は行くよ」

くるりと方向転換。
僕は屯所に向かって歩き始めたその時

「待って」

小さな子が着物の裾を握って僕を引き止めた。
何なのだろうと振り向いた瞬間口の中に何か甘いものが放り込まれる。

「お礼、拾うの手伝ってくれてありがとう。あとぶつかっちゃってごめんなさい」

それじゃあ、と言って小さな子は駆けていってしまった。

「…女の子、だったんだ」

最後に見たあの子の笑顔が何だかとても心に残った。




恋ってやつは
些細なことをきっかけに生まれるらしい

(名前、聞きそびれちゃったな…)


*****

沖田中編連載開始!
切甘目指します。



 

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