Hakuouki
□貴方が怒っている理由
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「えーと、その、なにをそんなに怒っていらっしゃっているのでございましょう…?」
私、大ピンチ。
「いえ、だから私は別に怒ってなどいませんよ」
「いや怒ってるじゃないですか」
「怒ってません」
じゃあなんでさっきから顔を合わせてくれないんですか。
明らかに怒ってるじゃないですか。
「機嫌直してくださいよ」
「怒ってません」
「じゃあこっち向いて下さい」
「今あなたの顔は見たくありません」
「怒ってるじゃないですか!」
なんなんだろう、一体。
ついさっき、私は土方さんに頼まれた雑務を終わらせて調度時間が空いたから山南さんの部屋に遊びに来ているのだけれど。
山南さんは私の顔なんて見たくねーよ、とご立腹なわけで。
「…山南さん」
「なんでしょうか」
心なしか声もいつもより刺々しい。
「あの、えっと」
「なんです、用事があるのなら早く済ませて下さい」
なんだその投げやりな対応は。
泣きたくなってきた。
「じゃあ言いますけど…」
「どうぞ」
くっ、なんだろう妙に腹立たしい。
ええい、もう良いよガツンと言ってやるからな!
「私、お邪魔でしたでしょうか…?」
やっぱりガツンは無理でした。
だって怖いもん、怖いんだもん。
それを聞いた山南さんは私の発言に驚いたのか少しだけ肩を揺らした。
「お仕事中なのは分かっていたのですけど」
分かってる、ただの私の我侭で。
「でも、なんと言いますか、その…」
貴方に会いたくて、なんてただの私の我侭。
「っ………!!」
そんなこと言える筈もなくて私は慌てて口をつぐんだ。
そんな子供みたいな我侭を、山南さんが許す訳、ないし。
「し、失礼しました!」
いたたまれなくなって山南さんの背中にお辞儀をして部屋の出口へと向かう。
あぁ、もう、ほんと嫌になってきた。
「お待ちなさい」
不意に帯を引っ張られて後ろに転倒する。
盛大に腰を打ち付けて、悶えた。
「全く、一人で先走るのがお好きなようですね」
溜息を一つ吐いて、山南さんはやっと私の顔を見る。
すると予想外にその顔は穏やかでちょっと気が抜けた。
「いや、でも今回ばかりは私も悪いのでしょうか」
独り言の様に呟く山南さん。
私にはさっぱり話が見えてこないのですが。
「私がこんなに女々しいとは、ね」
自虐的な笑みを浮かべる。
初めて見たその表情に、不謹慎ながら心が揺れた。
「山南さ、」
「結局のところ私が言いたいのは」
声をかけようとしたのを見事に遮られ、押し黙る。
そんな私を見て山南さんはふわりと微笑んで、
「あまり私以外の男と仲良くしないで頂きたい、と言うことです」
(最近土方君と仲が良過ぎだとは思いませんか?)
(…すみません)
*****
山南さんやってしまった。
後悔はしていない。