Hakuouki

□愛せなくて、ごめんね
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「好き、好きです。沖田さん」
「知ってるよ」

静かな部屋の中に沖田さんの咳が響く。
背中を丸めてこほこほと咳が止まるのを待つ沖田さんは凄く儚くて今にも消えてしまいそうだった。

「何回でも言います。私沖田さんのこと大好きです」
「うん、知ってる」

咳の合間に返事をしながら薄く笑みを浮かべる沖田さん。
辛いですよね?
無理して笑ってるんですよね?
でもごめんなさい沖田さん。
私には無理をしないでなんて言えません。
だって私は時折見せるあなたの笑顔が凄く凄く好きだったから。

「本当に我侭ですね、私…」
「どうしたのさ急に」

なんでもありません、そう言って首を振る。
沖田さんは訝しげな顔をしていたけれど本当ですよ、と笑って見せたら諦めたみたい。

その時、一際大きな咳を沖田さんはして口からは血が吐き出された。
咄嗟に手で口を覆ったものの指の間からは真っ赤な血が伝っている。

「沖田さんっ!」
「別に大丈夫だから、安心してよ」

嘘だ、そんなの。
大丈夫な人が口から血を吐くわけないじゃないですか。

「すき、すきです、本当に好きです」
「そんな一気にまくしたてないでよ」

あはは、と笑いながら沖田さんが言う。

「…その言葉が好きでしたになるまでそう時間はかからないのにね」

悲しくて、でも嬉しくて、やっぱり切ない。
そんな顔をしながら沖田さんは私が今まで聞いてきた言葉の中で一番寂しい言葉を口にした。

「過去形になんか、なる訳ないじゃないですか」

過去に出来る訳ないじゃないですか。

「後にも先にも私は沖田さん一筋なんですよーっ」

ふざけた様に言う。
でもこれが一番伝えたい事。

「…それは嬉しいね」

また沖田さんは笑う。
本当、何回見ても飽きないくらい綺麗な笑顔。
でも体は自分の力だけでは起きていられず布団の中へと崩れ落ちる。

「…最後にいっこだけ良い?」
「良いですけど、これが最後って言うのはいやです」
「それは無理な相談かなぁ…あの、さ―――」




愛せなくて、ごめんね


(神様一つだけお願いがあります)
(来世ではどうかあの人を悲しませないで)



*****

初、死ねた。

お題.確かに恋だった


 

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