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□流転白世界
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ザアザアと強い雨がアスファルトを打ち付けた。真っ暗な空の下、彼女は膝を立てて震える。そんな彼女の前に一人の男が立ち止まった。


「…そこ、俺の家の前なんだけど?」


彼女からの返事はない。代わりに絶望に満ちた目が男を捉えた。真っ黒な瞳に焦げ茶色の前髪が顔に張り付いていたのが印象的だった。


「…」


そんな男の視線は彼女の腕にあった。暗くてよく判らないが何かで切り付けたような傷があるのは確かだった。男は傘を持つ右手とは逆の左手で彼女の腕を掴み、引きずるようにして家の中に連れて入った。
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