連載
□無重力少年
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気が付けば、俺は地に足が着いていなかった。ふわっとした浮遊感に慣れないセイか、頭が揺れる感覚に吐気を催す。辺りを見ればまだ暗い。深夜の冷たい風がカタカタと部屋の窓を震わせる度に寒気がした。
「(ああ、遂に俺も頭がおかしくなったのかな)」
額に触れて平熱を確信する。風邪を引いたと云うことはなさそうだ。ならばこの浮遊感は何なのかと考えてみるが今までに経験したことはないし、聞いたこともない出来事だったので一向に理解出来ない。そう、例えるなら宇宙空間に居るような無重力感覚。
「まるで大気圏外に居るみたいだ」
そんな呟きも無明の部屋には虚しくも反響して消えるだけ。明日から学校どうしよう。浮いたまま通学なんてしたら大騒ぎするに決まってる。
田中 凜太郎(たなか りんたろう)。
今春に高2に進級したばかりの男子テニス部員。悩みます。