虹色世界の流離譚
□Stage 2
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魔法によって編成された小さな火がともる中で、七部族の副代表たちは、難しい面持ちで卓を囲んでいた。
皆一様に、口を閉じて黙り込んでいる中、ひとつだけ声が響いていた。
「……というわけで、僕の祖父の直感は、カエン様とマリン様が〈デミウルゴス〉の手にとらえられてしまったと、告げたそうです」
その場ではそぐわないほど若い青年が、神妙に告げる。誰もが重いため息をつき、ゆっくりと絶望の色が辺りにしみわたっていく。
「〈シュビレ〉の使命を受け継いだ者の言うことじゃ。おそらくそれは、確実なのだろう。お二方は、既に……」
「カエン様とマリン様がそのようなことになるとは……ダフネ様とウーレア様は、ご無事なのか?」
「祖父によれば、無事だそうです」
「そう、か……」
誰もがやり切れないように、重い息を吐いた。
〈デミウルゴス〉の目的は、七部族の長である〈イリスの落とし子〉たちが持つ力と、石であるらしいので、彼らの生命が脅かされる心配はない。
が、そうとはわかっていても、不安の芽は育っていくばかりだ。
「それと、祖父はもうひとつ、告げました」
一拍置いて告げられた内容に、副代表たちは驚愕に目を見開いた。
「見えなかった星が三つ、遠く時空を隔てられた世界にある、と」
○○
「ちゃん……お兄ちゃん」
すがるように自分を呼ぶ声に導かれるようにして、カエンは目を開いた。
最初に目に入ったのは、白目が真っ赤になってしまったマリンと、見なれない天井だった。
そこは全体的に、青色の光で満たされた部屋だった。
天井付近に浮かんでいる光球は白く輝いてはいるものの、それ以外――例えば壁の表面などが、呼吸しているかのように、青白い光を反射してゆらめいているのだ。
光をのみこんでたゆたう水の中にいるようで、何とも妙な気分になる。
(あっちの世界の、”スイゾクカン”を思い出すな……)
「大丈夫?」
「ああ、何とかな」
安心させるように微笑むと、マリンの瞳から新たな涙があふれる。
ぬぐってやろうと腕をあげるが、それすら億劫だ。どうやら、あの攻撃でだいぶ痛めつけられたらしい。