虹色世界の流離譚

□Prelude 2
3ページ/4ページ


そこで真守は、うーんと複雑そうにうなった。

「どうしたんだ? 真守」

『いや、どうして俺はそういうことを感じないで、お前ばっかり敏感なんだろうか、って思ってさ』

真守の疑問はもっともだった。彼は弦稀に出会う前、弦稀が感じたような胸のざわめきも、石が何かを訴えてくるような感覚も、何一つなかったらしい。だから彼は、弦稀が自分の石と力を目の前で見せた時は、たいそうおどろいたものだ。

「さあ、俺もそこまではわからないけど……」

『ああ、まあそうだよな。そもそも、どうして俺たちが生まれつきこんな力を持っているのか、誰もわからないし、知らないんだもんなあ』

真守は非常にあっさりとした口調で、ため息交じりに言う。しかし彼がそうやって、自分の力に関して屈折した思いをあまりはさむことなく口にするまでには、誰にも計ることができない長い葛藤があったことを、弦稀は察していた。

だから、かける言葉が見つからなくて、一瞬押し黙ってしまう。

『あっ、ま、まあ、思い悩んだってしょうがないよな! 今まで何とかなってきたし、これからも何とかなるよな!』

真守がわざとらしく前向きなことを言う。弦稀は、そうだな、と返しておいた。

『わ、悪い。何かまた、暗いこと言っちまって……』

「いや、大丈夫だ」

弦稀は話題をすり替えようと、頭をめぐらした。このままこの会話を続けてしまえば、二人ともが引きずられてしまうと思ったからだ。弦稀は強く意識して己を保とうとはしているが、やはり自分が他者と完全に異質であると意識するたび、どうしようもなくいらだってしまう。

考えるのはいいとしても、深く考えすぎて戻ってこれなくなるのは問題外だ。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ