06/04の日記

00:23
★置き去りにしてきた正義の話をしよう
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(風の消えた荒野で 声を失った詩人が何かを歌っている――)


一方的な視点から書かれた歴史書をひもとこう
日常はやがて消し去られてゆき 
朝と夜の追いかけっこはくり返され
時計が止まるまで息を止めていられる奴はいない



善は常に自分のために悪を欲し続けてきている
ものさしでキャンパスの形を決めてしまったせいで
無限にある色彩の中で染まるべき色は限定されてしまっていた
死すべき正義と生きるべき正義は主観によって番号がつけられる



語り部も書き手も臨場感を大切にしてしまう
何を作り上げ何を信じればいいのか
どうしたら幸せを手に入れれるのかが重要で
そのためには絶えず色を新しく塗りたくるしかなかったのだ



土にも空にも葬られることはなかった
記憶の消滅と共に忘却へ落とされたそれは
鎮魂歌も送られずに紅い色がべっとりとついて
誰からも忘れられたままだから決して血を洗い流せない



いつか閉じられるだろう物語の奥付けに
記載されることのない正義はどこへ消えたのか
記載者にあっさり捨てられてしまったそれは
眠りさえ与えられない眠りの中についている



「ゆり起してくれる人はいないかもしれない」
「誰かをを助けるはずだったのに誰かが見つけてくれることを期待している」
「生まれ続け葬られ続ける私 は い つ  ま  で    」



忘れ去られた正義は生きていたのか 死んでいたのか
生まれ来る正義は生きてゆけるのか 正式に死んでゆけるのか



始まりと終わりを定められた物語は
白黒はっきりした命を正義に与えられない
だから置き去りにしてきた正義の話をしよう
かりそめの生を 眠ることのない君に与えよう




(――風の消えた荒野で 完結の許されない一人劇が繰り返される)




(2011.5.26)

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