バカテス

□図書室運命
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この間図書室で会ってからよく見るようになった
いや、よく見られるようになった、だろうか
俺が図書室に来るとまるで見ていたかのようなタイミングで入ってきて、俺の向かいの席に座る。そして何をするでもなく俺をじっと見てくる
読みたい本が近くて人が少ないからと、この席を選んだことを後悔する。人が少ないから、俺の向かいの席は高確率で空いている
一度人が多いところへ行こうかとも考えたが、もしこの状況を見られたらと考えると動けなかったし、なぜ自分がそんなことをしなければならないのかと思いやめた
この間は"霧島に言う"と脅してみたか、一瞬驚いたあとニヤリと笑って"やれるもんならやってみろ"と言われた
霧島に伝える術が無いと思われたんだろう。ムカついたから霧島には匿名で、坂本が図書室にいると手紙を出しておいた
その後数日間は何も無かったが、再び俺の前に座りだした
少し挙動不審気味なのは、この間霧島に連れていかれたせいだろう
「(今日も集中出来なかった)」
荷物をまとめ図書室を出る
今まで気にしたことなど無かったが、アイツは俺が出た後どうしているのだろう
ふと思いついて振り返ると、ちょうど図書室から出てきた
「おい」
「!?なんだよ」
声をかけると一瞬驚いた顔をしたが直ぐに普通に戻った
「何で俺のこと見てんだよ」
「!?」
「もしかして俺にみとr…」
いきなり腕を引かれ言葉が続かなかった
「離せ!!何だいきなり」
屋上に着いてからやっと腕を解放された
「俺が何で見てるのか、だったな。教えてやるよ」
スッと目の前に影が出来たと思ったら、何かが唇に触れた。目の前に坂本の顔のアップ。それらは確実に認識する前に離れていったが、さすがに何を意味するのかは分かった
「これが答えだ」
そのまま立ち去られてしまったが、俺は動けない
「(何なんだよ、いったい……)」
どれだけ待っても心臓の音は煩いくらい鳴り響いていた

―思いが通じるまであと―
 

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