短き夢幻

□人形
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あの紅い着物を洗濯に出し、要らない手拭い等で創った服を人形に着せた。
髪は震える手を抑えながら銀時が整えた。
だって失敗したらスタンドさんに怒られそうな気がしたんだもの。
少し髪を切り、付いていた華の髪飾りで結ってやる。
銀さん器用だから何でも出来ちゃうのな。
羨ましい…
「ほれ、出来たぞ〜」
いつも通りにやる気無さげにするが、実際は極細の精神の糸ラスト一本が張り詰めて、今にも切れそうだったのが弛緩していくのを感じている。
「凄いヨ銀ちゃん!銀ちゃんの手は魔法みたいアル!」
「そりゃどーも。」
人形の髪型を見た途端目を輝かし、褒めまくる神楽に素っ気ない態度を取る。
そしてもう一度人形を見た。
手拭いの柄は大体バランスが取れるように似たような色と柄を選んだからそのまま着せてても全く恥ずかしくない仕上がりだ。
顔や手などに付いた土や埃を拭き取り、髪を綺麗にセットしてやればスタンド的な何かが憑いていると言う発想が打ち砕かれた。
「良かったなぁ定春30号、お前も今日から万事屋ファミリーの一員ネ!ワタシの妹にしてやるヨ!」
定春30号って…そのお人形さんどう見ても女の子だよ。
と突っ込んでみてもよかったが、なんやかんやで神楽が嬉しそうなので良しとした。


「おはよーございます。あれ?銀さんどうしたんですか?その人形。」
翌日、いつもなら起こさないといつまでも寝ている主人が起きていて、しかもテーブルの上にちょこんと人形が乗っていた。
それに少し驚いた志村新八は、銀時の横に座り人形を凝視した。
「定春30号」
人形の頭を軽く叩きながら紹介してやる。
「定春って…この子思いっきり女の子なんスけど…」
あ、やっぱりそこ気になるよね。
「神楽が決めたんだよ。」
「ああ成る程ぉ。神楽ちゃんらしいですね。…にしてもこんなのを欲しがるなんて、やっぱ女の子っスね。」
くすくす微笑ましそうに笑う新八。
「だな」
立派な父親(?)の顔をした銀時が、今度は定春30号の頭を優しく撫でた。
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