短き夢幻

□節分の日
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「銀ちゃ―ん起きるアルー!」
ジャンプを顔に被せながら眠っていた銀時はゆさゆさと神楽に揺り起こされた。
(…夢か)
昔の夢だ。
節分の日、桂と高杉が泊まりに来て、節分の事を教えて貰って…
「早く太巻き食べるネ!ワタシお腹ぺこぺこヨ!オイ早くするアル駄眼鏡。だからお前は新一じゃなくて新八アルヨ」
「酷くない!?用意している相手に向かってそれは酷くない!?ってか名前関係ねぇし!」
お約束事を一通り済ました二人は銀時に笑いかけた。
「早くするネ!レディーを待たすなんて最低アル!」
「こんなヨダレ垂らしたレディーを待たせたってバチなんざ当たんねぇよ。」
涎を垂らす神楽の頭をぺしぺしと叩き、恵方巻を一本手に取る。
「神楽ちゃん、太巻き食べてる間一言も喋らず心の中で願い事を唱えると、願いが叶うって言われてるんだよ?」
神楽の隣で新八が言うと、彼女は目を輝かせた。
「マジでか!ならワタシももうすぐえーりあんはんたーネ!」
今年の方角を向き、恵方巻を食べている間誰も何も言わない。
機械の如く手を動かし恵方巻を頬張る神楽に、新八はツッコミを入れようとしたがギリギリの所で堪え何も言わない。
(ガキだねぇ…)
と思いながら一言も喋らない自分もガキだなぁと、銀時は微かに口角をつり上げ恵方巻を頬張った。

「次は豆まきアル!新八、早く豆を寄越すヨロシ」
手を差し出してくる神楽に新八は苦笑しながら豆がたっぷりはいった器を渡した。
「じゃあ、鬼は僕が…」
「俺がやるよ。」
新八の持っていた鬼の面を横から奪い取り、銀時は言った。
「銀さんっ」
新八が銀時を振り返ると、銀時は鬼の面をひらひらとさせてにやりと笑った。
「ガキはガキらしく豆まきでもしてろ。」
銀時のその顔を見て、神楽も新八もきょとんとした顔から悪戯を思いついた子供の顔になった。
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