捧げ物
□奏様へ
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「むむ?銀時にリーダーではないか」
突然、銀時とサイドをチェンジした神楽の背後から聞こえてきた
聞き覚えのある声
銀時がそちらに顔を向けるのと、神楽が振り返り声を上げるのは同時
「おぉ、ヅラ」
そこに居たのは黒髪長髪の端正な顔立ちの男
普通にしていればイケメンだが、一度口を開けばもう手遅れな男・桂小太郎その人だ。
「何だよ、今日はエリザベスと一緒じゃないアルか?」
一度キャッチボールを中断した神楽が桂に近寄っていく。
彼は無表情のまま腕を組み
神楽を見下ろした。
「ヅラじゃない桂だリーダー。何、エリザベスは今所用で家を開けていてな。暇を持て余していたので、少し散歩をしていた」
「攘夷志士が攘夷活動ほっぽって何やってんだよ」
至極真面目に答えた攘夷浪士に、銀時は至極真面目に突っ込んだ。
この男、昔からやる事為すこと総てが掴み所がなく
何度も頭を抱えてきた。
それは今でも変わりなく、一発殴ってやろうかと物騒な事をまさか銀時が考えているとは露知らず
桂は神楽が持っている彼女の拳程の大きさの球体に目を遣った。
「?何だ、キャッチボールでもしていたのか?俺も昔はかめはめはを撃とうと、ボールで必死に特訓したものだ」
「いや、ボールでかめはめはは撃てないから。つーか関係ないからキャッチボールと」
「どれちょっと貸してくれリーダー」
「おーい、無視かおーい」
銀時の突っ込みは空しく華麗にスルーされ、ボールは神楽の手から桂の手へ渡った。
桂が手に馴染ませるように親指で撫でたりぎゅっと握り締めたりして
軈は銀時に向き直ると、やおら彼に向かってそれを投げつけた。
「おっ‥」
弧を描いたボールは銀時の手元に入り込む様に迫り手に納まる。
その流れに従って銀時も桂に球を投げ、それをキャッチした桂がまた銀時目掛けて投げる。
銀時の口角がニタリと吊り上がった。
「うおぉぉっ!!」
「はあぁぁっ!!」
『ぬおおぉぉぉおぉぉっ!!!』
銀時の雄叫びを合図に、二人の闘いは切って落とされた
目にも止まらぬ速さでボールを受け止めては投げ受け止めては投げ
神業とも呼べるその速さに、神楽もおぉっ!っと興奮して食い入る様にその応酬を見つめた。
両者違いに一歩も引かず、散ってもいない火花が爆ぜて火の粉が舞うような接戦
しかしそれは、マジになって力の加減が出来なくなった銀時の手許が狂った事により幕を閉じた。
「あ、やっべぇ」
いくらゴム製とは言え、銀時の化け物染みた力が加えられたボールは桂を摺り抜け、空き地の前を通り掛かった通行人目掛けて飛んで行った。
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