短き夢幻

□節分の日
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節分。
初めて聞いた時何の事だかさっぱりだった。
「節分とはだな、二月三日の夜に鬼打ちの豆まきをしたり、柊の枝に鰯の頭をさしたのを戸口にはさんだりして邪気を祓うことを言うのだ。」
そんな銀時に説明をしたのは小太郎だ。
今日は二月三日。
小太郎や晋助は銀時と松陽の家に泊まりに来ている。
「要は豆まいたりして鬼を追っ払うんだよ。」
「…へ〜」
何だか複雑な気分だ。
前まで自分は鬼と言われ、そうなんだと思ってきた。
何だか自分が追い出される見たいで少し苦しくなる。
「よし、じゃあ俺が鬼になろう!」
シュピッ!なんて効果音がつきそうな勢いで手を挙げながら宣言したのは小太郎だった。
手にはしっかり紙で作られた鬼の面が握られている。
何でそんな鬼になる気満々なのか…
「勿論、俺だけではなく、貴様もだぞ晋助!」
こんどはビシッ!なんて効果音がつきそうな勢いで晋助を指差す小太郎。
「はぁ!?何で俺まで!」
「仕方なかろう、俺だって豆まきをしたいのだ!拒否権なしだからな!」
「何だと小太郎のくせして!」
また不毛な言い争いに発展しそうだ。
「………」
銀時はまた複雑な気分だった。
何故かと言うと、ついさっきまで自分は豆をまき追い出される鬼と、鬼と呼ばれた自分を重ねて苦しく感じた。
しかし、今自分の目の前の二人が鬼になるならないの話をしているのに、自分はそこに入れてもらえず、何だか疎外されているようで複雑だ。
「あれが二人の優しさですよ銀時。」
「?」
突然後ろから話しかけられ振り返ると、自分達の恩師が穏やかに笑っていた。
「……どーゆーこと?」
意味を掴み損ね訊ねると、松陽は相変わらずの笑みで銀時の隣に立った。
「彼らはあなたが鬼と呼ばれていた事を知っている。だから、無理矢理あなたを鬼役にさせないようにしているんですよ。」
銀時は軽く目を見張り二人に視線を戻す。
未だ口論している二人。
その優しさに思わず目を細めた。
「銀時」
銀時はもう一度師を仰ぎ見た。

松陽は口を開いて言葉を紡いだ―――
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