短き夢幻

□夏休み=恐怖
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「ひゃっほぉ〜!海だ海だぁ!」
夏盛り。
コバルトブルーの空に大きな白い雲が浮かぶ。
そしてその空の下に広がる白い砂浜に空に負けない位蒼い海。
絶景そのもの。
それ以上でもそれ以下でもない。
そんな海を見て無邪気にはしゃぐぼたん。
恋人である蔵馬にとったら海だけの景色よりも絶景に見えている。
ただやはり人が多く、ぼたんの無邪気な笑い声も雑音で聞き取りにくい。
「お!お〜い!蔵馬ぁ〜ぼた〜ん!!」
突然、背後から声をかけられた。振り向けば見知った顔が2つ。
「幽助、桑原君!」
「あぁれまあんた達も来てたのかい?」
今回俗に言うデートと言うわけで、この二人と会ったのは偶然そのものだろう。
「ああ。俺の知り合いがよ、この近辺に住んでてな!」
胸を張って得意気に言う幽助が少し可笑しかった。
「で、おめぇらは?」
桑原が蔵馬とぼたんを交互に見やった。
「デート…と言えば解りますか?」
悪戯っぽい笑みを口許に乗せながらぼたんの肩を抱き寄せる蔵馬。
女顔女顔と言われている彼だが、こうやって見ると本当にかっこいい。
その証拠に、ぼたんの顔がイチゴの様に真っ赤になっていく。
「かぁ〜見せつけてくれるぢゃねぇかお二人さん!」
「全くだぜこのバカップル!」
自分達の事の様に顔を真っ赤にするふたり。
そんな恥ずかしい事をしてる訳でもないのに何故ここまでなるかと言うと。
周囲に問題があった。
見ての通り、ふたりは美男美女。
それ故、人が集まってくる。
女性は蔵馬を。
男性はぼたんを直視してくる。
ふたりに降りかかる視線のとばっちりを受けて、その残骸のような視線を幽助達も浴びていた。
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