貰い物

□昔の約束
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「そういえば…。」

部室でゲームをしていた栗松が言った。

「キャプテンと風丸先輩って、古い付き合いなんスよね?」
「なんだ?いきなり。」
「風丸先輩の説明に、書いてあるでやんす。」
「見せてみろよ。『円堂とは、実は古い付き合い』…。ホントだ。」

半田が円堂を見た。

「あぁ。5才くらいからの付き合いだな。」
「へぇ。風丸って、小さい頃からあんなにしっかりしてたのか?」
「いやぁ…そうでもない、かな…。」
「え、ホントでやんすかっ?」
「あぁ。そういえば、あれからもう9年も経つんだよなぁ。」
「教えてほしいッスー!」
「いいぜ!じゃ、集まれ、集まれ!!」

鬼道、栗松、壁山、そして半田が、円堂に向きなおった…。



〈9年前。円堂たちが5才の時―――。〉


円堂は、今日もサッカーボールを持って、鉄塔に走っていた。

「風丸いるかなっ?」

いつも綺麗なライトブルーの髪をなびかせて、楽しそうに走っている風丸と、円堂はいつもサッカーをしていた。

「風…。」

鉄塔につくと、風丸は、小学校の6年生くらいの男子生徒2人に絡まれていた。

「風丸…?」
「え、円堂!」

風丸が顔をあげる。
赤褐色の大きな瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。

「風丸!」
「えん…どぉ…っ。」

気が緩んだのか、風丸の白い頬に涙が伝う。

「お前ら、一体風丸になにしてるんだよ!」
「友達か?この女の子が、自分は男だ、って生意気言うからさぁ?」
「お、オレは男だっ!!」
「こんなかわいい顔して、男なわけないだろ。」
「髪も長いしなっ!」
「う…ふえぇ…えんろぉ…。」

風丸はボロボロと涙を流し、小さく肩を震わせ泣きじゃくった。
円堂は見ていられなくなり、

「もうやめろよ!」

と風丸の前に立ちふさがった。

「や、安井さん…騒ぎになったらヤバいッスよ…。」

ボスらしき男子の後ろにいる小柄な男子が言う。

「風丸をいじめるなんて、許さない!」
「……。」

風丸が、円堂の服を握りしめた。

「オレは、風丸を守る!」
「…ハッ。きょ、今日は許してやるよ!」

ひと昔前から使用されている捨てゼリフを残して、2人は去って行った。

「風丸、風丸!」

円堂は後ろを向いて、風丸の両肩を持った。

「…円堂…円堂おぉ!!」

円堂に抱きついて、静かに泣く風丸の背中を、円堂はポンポンと優しくたたく。

「怖かった…。円堂に助けに来てほしい、って思ってて…。」
「ん…。」
「円堂…っ、ふぇ…っく…。」
「…なぁ、風丸。」

円堂は風丸の肩をつかみ、ゆっくりと顔を離した。

「オレさ、風丸のこと好きだぜ!!」
「? …うん。」
「だから、これからもずっと、風丸のこと守るから!!」
「…うんっ!じゃあ、オレは円堂と結婚して、お嫁さんになる!そしたら、ずーっと一緒にいられるもんなっ!」
「あぁ!じゃあ、オレは風丸のお婿さんだなっ!」
「うんっ!!」

風丸は、心底うれしそうに微笑んだのだった…。
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