その他小説
□【願い】
1ページ/5ページ
アスランがメイリンと共に、アークエンジェルに拾われてから数日が経っていた。
「・・・はぁ〜。」
「どうした、坊主?何か悩み事か?」
「・・・フラガ少佐。」
「だから、俺はネオ・ロアノークた・い・さ!何度言えば分かるんだ?」
「・・・すみません、大佐。」
「分かればよろしい。」
アスランが素直に訂正するのに気を良くしたネオは、アスランの頭を撫でる。アークエンジェルのクルーはどんなに訂正しても“少佐”と呼ぶので嬉しかったのだろう。
身体が動かないアスランはされるがままになっている。
「・・・で?何悩んでいるんだよ?」
ネオの問いに、アスランは少し戸惑いながらも答える。
「ザフトに・・・大切な人がいたんです。」
「大切な人?ひょっとして恋人か?」
「いえ。俺は好きですけど、向こうはライバルとしか思ってなくて。」
アスランの翡翠の瞳が哀しげに揺れるのを見て、ネオはおちゃらけるのをやめた。
「何も言わずに出てきてしまって、あっちにとったら俺は裏切り者でしかないけど・・・それでも・・・」
“会いたい”と、聞こえるか聞こえないかの声でアスランは呟く。そのまま布団に潜り込んでしまったアスランを見ながら、ネオも黙っていた。
しばしの沈黙の後、ネオは何かを思い出したかのように聞いた。
「そういえばさ、坊主は2年前のヤキン・ドゥーエ戦もアークエンジェルに居たんだよな?」
「・・・ええ、まあ。」
少し涙声になっていたようだが、アスランは答えた。ネオは気付かないフリをして問う。
「あの茶髪の坊主と金髪の嬢ちゃんの話を聞く限りじゃあ、その時もザフトを出てきたんだろう?その時はどうだったんだよ?」
「キラとカガリから聞いたんですか?その時は許してくれたみたいです。それどころか俺たちを助けてくれた。」
その光景を思い出し、フッと笑う。ネオはそんな顔も出来るのか、と多少驚きながら話を続ける。
「だったら、今回も許してくれるんじゃないか?前回は助けてくれたんだろ?」
「それはっ・・・都合が良すぎませんか?」
「そんなことないだろう。ザフトを裏切ってでも君を助けたんだから。」
「あの時は・・・イザークが戦っていた相手は地球連合軍だったから。でも、今回は状況が違います。俺たちの戦う相手は確実にザフトです。それに彼もあの頃と違う。艦を任されてる隊長なんですよ!?艦を見捨ててまで味方してくれるって言うんですか?・・・って、あ!」
アスランは自分の失言に気付き、顔を赤くしてしまう。ネオは頭を掻きながら言う。
「話の流れ的に分かってはいたが、やっぱり相手は男か。」
「・・・男だと分かってても、どうしようもなく好きなんです。俺の事、気持ち悪いと思いますか?」
「別に俺はそんな事気にしないけどさ。お互いがそれでいいならいいじゃないか。」
「・・・俺の片想いですよ。」
「それも青春でいいじゃないの。」
複雑そうな顔をするアスランに対し、ネオは陽気だ。
「でもさ、まだ戦わなきゃならないとは限らないだろ?ゆっくり悩めよ、少年!」
「ちょっ!?・・・大佐、痛いですよ!」
バンバンと背中を叩くネオに非難の声をあげながら、アスランは涙目で睨む。
「とりあえず、今は怪我を治すことだけを考えなって。それからでも遅くはないさ。なっ?」
陽気な表情でネオに強引に寝かしつけられ、アスランはフラガを思い出し、苦笑する。