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□【願い】
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アスランがメイリンと共に、アークエンジェルに拾われてから数日が経っていた。

「・・・はぁ〜。」

「どうした、坊主?何か悩み事か?」

「・・・フラガ少佐。」

「だから、俺はネオ・ロアノークた・い・さ!何度言えば分かるんだ?」

「・・・すみません、大佐。」

「分かればよろしい。」

アスランが素直に訂正するのに気を良くしたネオは、アスランの頭を撫でる。アークエンジェルのクルーはどんなに訂正しても“少佐”と呼ぶので嬉しかったのだろう。
身体が動かないアスランはされるがままになっている。

「・・・で?何悩んでいるんだよ?」

ネオの問いに、アスランは少し戸惑いながらも答える。

「ザフトに・・・大切な人がいたんです。」

「大切な人?ひょっとして恋人か?」

「いえ。俺は好きですけど、向こうはライバルとしか思ってなくて。」

アスランの翡翠の瞳が哀しげに揺れるのを見て、ネオはおちゃらけるのをやめた。

「何も言わずに出てきてしまって、あっちにとったら俺は裏切り者でしかないけど・・・それでも・・・」

“会いたい”と、聞こえるか聞こえないかの声でアスランは呟く。そのまま布団に潜り込んでしまったアスランを見ながら、ネオも黙っていた。
しばしの沈黙の後、ネオは何かを思い出したかのように聞いた。

「そういえばさ、坊主は2年前のヤキン・ドゥーエ戦もアークエンジェルに居たんだよな?」

「・・・ええ、まあ。」

少し涙声になっていたようだが、アスランは答えた。ネオは気付かないフリをして問う。

「あの茶髪の坊主と金髪の嬢ちゃんの話を聞く限りじゃあ、その時もザフトを出てきたんだろう?その時はどうだったんだよ?」

「キラとカガリから聞いたんですか?その時は許してくれたみたいです。それどころか俺たちを助けてくれた。」

その光景を思い出し、フッと笑う。ネオはそんな顔も出来るのか、と多少驚きながら話を続ける。

「だったら、今回も許してくれるんじゃないか?前回は助けてくれたんだろ?」

「それはっ・・・都合が良すぎませんか?」

「そんなことないだろう。ザフトを裏切ってでも君を助けたんだから。」

「あの時は・・・イザークが戦っていた相手は地球連合軍だったから。でも、今回は状況が違います。俺たちの戦う相手は確実にザフトです。それに彼もあの頃と違う。艦を任されてる隊長なんですよ!?艦を見捨ててまで味方してくれるって言うんですか?・・・って、あ!」

アスランは自分の失言に気付き、顔を赤くしてしまう。ネオは頭を掻きながら言う。

「話の流れ的に分かってはいたが、やっぱり相手は男か。」

「・・・男だと分かってても、どうしようもなく好きなんです。俺の事、気持ち悪いと思いますか?」

「別に俺はそんな事気にしないけどさ。お互いがそれでいいならいいじゃないか。」

「・・・俺の片想いですよ。」

「それも青春でいいじゃないの。」

複雑そうな顔をするアスランに対し、ネオは陽気だ。

「でもさ、まだ戦わなきゃならないとは限らないだろ?ゆっくり悩めよ、少年!」

「ちょっ!?・・・大佐、痛いですよ!」

バンバンと背中を叩くネオに非難の声をあげながら、アスランは涙目で睨む。

「とりあえず、今は怪我を治すことだけを考えなって。それからでも遅くはないさ。なっ?」

陽気な表情でネオに強引に寝かしつけられ、アスランはフラガを思い出し、苦笑する。
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