立海

□ファーストキスはグリーンアップル味
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「丸井くんおめでとう!!」
「丸井くーん!どこー?!」
「ブン太くん素敵!」



朝っぱらからいつもより数倍煩い女子。普段でさえもう頭が痛くなるほど煩いのに、数倍っつったらもうルドルフの赤澤が負けるぐらいだ。いや、冗談ではなく。

そしてこれには原因がある。
いつもお菓子を持ち歩き、甘いフェイスで赤髪の同じ部活の奴…そいつの名前は丸井ブン太。今日はその丸井の誕生日らしい。誕生日でこの煩さなんだから葬式ではもっと騒がしいだろうな。なんて冗談は置いとき、たった今から俺は、男子のいけ好かない同性第10位以内(自分調べ)であろう丸井に男子諸君の思いを背負い講義をしに行く。講義内容は勿論“コレ、どうにかしろ”。ぶっちゃけ丸井とは話したことないけどまぁいっか。
理不尽?…なんとでも言え。
俺はさっそく丸井が隠れているであろう裏庭に向かった。







「ったく。誕生日だからってなんで俺が制服のボタン取られなきゃなんねーんだよ…せめて取るなら卒業式にしろっての。あーあ。これだから女は嫌だ。」



裏庭には案の定ボロボロの丸井がいた。彼の言葉から察するに、女子に制服のボタンを取られたのだろう…制服の前が留められなくなっている。可哀相だなんて確かに思うけど、一人でモテる男の悩みみたいな事を言っている姿にさらに俺のムカつき度が上昇した。



「はぁ。こんな最悪な誕生日だけど…仁王が」
『呼んだか?』
「…え?え?うわぁああああ!!!!」



独り言中に後ろから話しかけてやれば大きく跳ねる体。名前を呼ばれたから返事しただけなのに何故幽霊を見るような顔をされなきゃいけないんだ。だけどいつもより少し赤面した顔は可愛いかもしれない…って馬鹿か俺は。



「ななななんの用だ仁王!」
『それはこっちのセリフきに。人の名前呼んどいて…』
「き…聞き間違えだろぃ!」



丸井は首を横に振って否定するがあきらかに嘘だろう。まあ自分の名前を呼んでたことは気になるが今はそれどころではない。
…さっさと用件を言って終わらせるか。



『とりあえず、校門の前にケーキに群がる蟻みたいな女達をどうにかしてくれんかのぅ。』
「…え?」
『お前さんの誕生日がどうたらっつって煩いんじゃよ。』



わざとらしく溜息をついてみると、丸井は眉を八の形に曲げて目を潤ました。…そういう仕種が女子を虜にするのか。



「俺だって出来る事ならこの騒ぎをどうにかしてーよ。まさか誕生日にこんなことになるなんて…去年はこんなんじゃなかったんだけどなぁ。」
『そんなこと言ってどうせ毎年可愛いリボンのプレゼント貰ってるんやろ。』
「そんなことない!今までプレゼントは全部貰ってないしそれに俺は本命からしか貰わない予定なんだよ!」
『本命って…。』
「いや!今のも聞かなかったことにしろぃ!!」
『あ、うん。』



こいつは何回この言葉を口にする気か。
…まあ別に丸井の本命に興味なんかないけど。



「…ごめん。俺のせいだってのはわかってんだけどどうにもできなくてイライラしてて…。あ、ガムいる?」
『…ん。』



俺は丸井からいつも食べている薄緑色のガムを貰った。口に放り込んでみると甘いアップルの味が口いっぱいに広がる。俺には少し甘すぎるそれはすぐに吐き出すのもあれなんでおとなしく噛み続けることにした。



『悪くない味じゃな』
「そうだろ!…あ、あの、誕生日」
『あ?』
「誕生日プレゼントとかくれねーの…?」
『プレゼント…』



いきなり何を言うと思えば上目使いでおねだりか。生憎、俺は丸井の大好きなお菓子もないしいい女も紹介できない。というより俺が友達でもなんでもない奴にプレゼントをあげるわけがない。
一言「ない」といえばそれで終わりなんだが、なぜか俺と丸井の距離はゼロになっていた。つまり丸井とキスをしたのだ。理由なんてない。いうなればそこに丸井の唇があったから、だ。後悔してももう遅い。



『これが誕生日プレゼント…どうじゃ?』



我ながらいいドヤ顔で丸井を見れば意外にも真っ赤になっている丸井の顔。
…なんだその反応は。彼女とキスくらいしてるだろ。


『ま…るい…?』

「…これファーストキスなんだけど」







<ファーストキスはグリーンアップル味>



…うそ……

…………
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この作品は赤髪の妙技師が世界一様に提出しました!
仁王が好きな丸井くんと無自覚で丸井が好きな仁王くんの話なんですがわかりにくいですね…><
とにかくHAPPY BIRTHDAY丸井!


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