立海
□疑問+視線+君
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『参謀はさぁ…俺が好きなの?』
二人っきりの部室で、俺はずっと前から思っていた疑問を投げ掛けた。話し掛けてはこないものの毎回部活中俺を見ている参謀こと柳蓮二に。
「…」
『なぁ。どうなんじゃ?』
最初は男に…ましては知り合いに好かれるなんてないと思い、気のせいだとスルーしていた。だが、確信したのは昨日このことを遠回し幸村に相談したとき。そのときの彼の彼の一言だ。柳という名前は出してないのにも関わらず、突然柳の話になったときだった。
“蓮二と話していると一回は仁王について話すんだよねー”
聞き返そうと思って止めた。もし聞き返したら相手が柳ということがバレそうだったから。…いや、すでにバレてるのかもしれないが。
部活の終わった部室には日誌を書く柳と鍵当番の俺しかいなかった。
チャンスは今しかないと思った俺は今こうして話したわけだ。
『なあ、参謀』
「…」
『なんで部活中ずっと俺のこと見てるの?』
「………さぁ」
『さぁって…』
あまりに柳らしくない意外な返答に俺は気が抜けた。
柳はというと、いつものごとく無表情で日誌を書いている。
彼はそれ以上の返答はせず、部室にはカリ…カリ…という日誌を書く音と鈴虫の鳴く音しか聞こえない。
『参謀ぉ…』
「…なんだ」
『幸村から聞いたんじゃがよく俺んこと話してるってホンマ?』
「………………さぁ」
「…っ!」
この対応には流石の俺もカチンときた。
図星なのか、それともめんどくさいだけなのか。それすらもはっきりさせず流す彼はすまし顔でペンを走らせる。
『参謀』
「…なにをする」
強 行 手 段。
俺は柳のペンを無理矢理奪い取って床に投げ、さらに床に押し倒した。
がたんっと椅子が派手に転がったが今は気にしない。
『そろそろはっきりさせてしてくれないかのぅ』
「…意味がわからないな」
『強がっていられるのも今のうちじゃけ。
はっきり言う。参謀は俺のこと好きじゃろ』
静かに目を開ける参謀。
…とってもいまさらだが俺の勘違いだったらどうしよう。そしたら柳になんて顔をすればいいんだ。
ふっとそんな考えが浮かんだが、そんなことすぐに掻き消された。参謀の言葉によって。
『…そうか。これが好きという感情なのかもしれんな』
「参謀?」
『仁王を見るだけで顔が熱くなる。話すだけで心拍数が上がる。…これが恋なのか』
「…」
『仁王、お前が好き…だ』
顔を朱く色づけながら話す参謀は綺麗…というか可愛かった。
参謀にこんなこと思うなんて我ながらどうかしている……なんて数分前の俺ならそう言ったかもしれない。
だが今、自分の気持ちに気付いてしまったからには何も言えなかった。
この気持ちは…。
「仁王、すまないな。男なんかに言われて気持ち悪『好き』…え」
『参謀が…柳が好きじゃ』
この気持ちを今言わないでいつ言うというのか。
俺は自然と組み伏せていた参謀を抱きしめていた。
『柳が好き。誰よりも好き、愛してる』
「う…そ…」
『偽りなんてない。今回だけはどうも詐欺師になれん』
顔が林檎みたいに真っ赤な参謀。
でも俺の頬も同じくらい熱があるだろう。
顔が熱い。
胸の音がうるさい。
『俺と…付き合ってください』
「っ…」
『柳の答えは?』
「決まってるだろ馬鹿…。これからも…よろしくお願いします」
<疑問+視線+君>
= 恋!
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