立海
□馬鹿の子ほど
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「あーもうやだ!!!英語わかんねぇー」
『赤也。そんなこと言ってるともう教えないぞ』
「…すんません」
赤也に勉強を教えて早一時間。
進歩はあったものの過去形で止まっている。
「もうなんなんスか“でぃどぅ”って!」
『…』
一ヶ月前、赤也から告白された。
突然だったこともあり、一日待ってもらって出た答えは「これからもよろしくな」とOKの返事。
だが今考えると、あのとき何故返事をOKしたのか自分にもわからない。
つまり一ヶ月前の自分の気持ちも消え去るくらい、赤也の馬鹿さに絶望しているのだ。
「柳さーん…“はぶ”の過去形は?」
『それはさっき教えただろう』
そしてなにより馬鹿以前に物覚えが悪い。
最初に疑問文を教えた(教える、というよりもう中二だから復習になるが)10分後に「ぎもんぶん…?なんでしたっけ」なんて返してきたときには本気で諦めかけた。
…なんでこいつは進級できたのだろう。
「あ、でも俺絶対書ける英語があるんスよ!」
『ほう…なんだ?』
「ちょっと待ってください」
紙に汚い字で再びペンを走らせる赤也。
だいたい書く字は予想できている。
きっと“red”とか“I am Akaya”とかそのへんだろう。
そんなつまらない予測をしている間に書き終わったようで、赤也は満面の笑みで紙を見せてきた。
「へへっ…どうっすか?」
『………どう…と言われてもな』
紙を見ると、そこには“I love 柳さん”と書いてあった。
はぁ…一ヶ月前の俺はこんなとこに惚れたのかな。
<馬鹿の子ほど>
可愛いっていうのは本当なんだな。
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