立海
□クリスマス2010
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ふわふわと空から降る真っ白な結晶、雪。
触るとすぐ溶けるそれは、今の俺にはおいしそうに見えて、上を向いて口を開けてみた。
…やはり冷たいだけで味もない。それはまるで心まで冷やすようで俺は静かに正面に向き直した。
その瞬間、いきなり感じる温もり。抱きしめられてるのだと気付いて、顔を上げると見知った銀髪が雪に濡れてきらきらと輝いていた。
「ブン太、雪はおいしいかのぅ」
『に…お』
「すまん。遅れた」
『……ばか』
抱きしめる力が強くなれば自然と体温も上がる。
でも公衆の面前ということもあってすぐ離れると、仁王は左手を差し出してきた。迷わず俺はそれを自分の右手で繋ぐ。仁王の手は冷たかったが、仁王の隣にいるという事実だけで自然と体は温かくなった。
『今日はどうして遅れたんだよ仁王』
「…すまん」
『…理由を聞いてんだけど。せっかく一緒に年越しできないっていうからクリスマスを少しでも長く一緒に過ごすって予定だったのに…まあ別に気にしてないけ、』
「ブン太」
ぐっと引き寄せられ、目の前に触れるか触れないかすれすれで仁王の顔がある状態になった。
『な…なに?』
「ぎりぎりになって言おうかと思ってたんだけど…俺と一緒に一緒に年越してくれんか?」
『………え!?』
仁王の衝撃の言葉に俺は言葉がつまった。
嘘かと思えば顔が真剣で本気ということがわかる。
『だ…だって親と実家帰るって』
「今日親と講義した。おもったより親がうるさくてのぅ。喧嘩してたら遅くなってもうた」
『そんな…仁王は…いいのか?』
「ああ。ブン太と過ごせればそれでええよ。」
くくっと笑うと仁王は俺の頭を撫でた。
わざわざ俺のためにここまでしてくれて、そりゃ嬉しいけど同時に頭に不安がよぎる。簡潔にいうと仁王は親と喧嘩をしたわけで…。自分のせいで喧嘩したのだから笑えなかった。
それに気付いたのか仁王は「安心せい。そんな大喧嘩でもない」と笑ってごまかした。
『でも…』
「それに時間がクリスマスプレゼントって素敵やろ?」
『にお…!』
「どうじゃ?」
『………馬鹿。
最高に決まってるだろぃ』
待ってましたと言わんばかりにキスをされ、俺はそっと目をつむった。
最高のプレゼントを…ありがとう。
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クリスマス記念小説。
すごく甘い…です。