その他
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今日は日曜日。
学校がないからゆっくり休もうかと思ったがテニス馬鹿な俺は、跡部さんから貰った「跡部私有特別テニスコート貸し切り券」を使い、テニスコートに来ていた。
この奇妙な券はその名前の通り、跡部さん所有の最高の設備施したをテニスコートを一日貸し切りに出来るというものだ。
この券を貰った当初は勿論ものすごく喜んだし今までにないくらい跡部さんに感謝した。
………だがテニスコートに着いた今、喜んだり跡部さんに感謝する気持ちにはなれなかった。
「あ!やっと来たんだ日吉くん」
跡部さんは“貸し切り券”と言ったはずなのに、なんでワカ…切原がいるんだ。
しかもちゃんとラケットも持ちやがって。
『なんでテメェがここにいる』
「だって日吉くん、こんないい施設で一人で壁打ちだなんて悲しいでしょ?
だから恋人の俺が神奈川から遥々来たんだ」
ニコニコしながら俺と同じ券を見せびらかしてくる切原に殺意が湧いた…あと跡部さんにも。
でもここで何か言っててもなにも変わらないのでおとなしくすることにしよう。
「まあまあそんな怒らないでさぁ。とりあえずほら。ラリーでもしよう」
『……』
「いいでしょ!な!」
『………………ああ』
「よしっ!じゃあ俺からサーブな」
あんなキラキラした笑顔で言われたら断れるはずもなく、仕方ないので鞄を置いてコートに入る。
あっちも準備できたのか手を振ってきたので素直に頷いた。
「いくよ日吉くん」
奴が打ったのは小学生でも簡単に取れるんじゃないかというくらい緩いサーブ。
いくらラリーをするからといってもこれじゃ練習にならない。
もうちょっと強く打て、と不機嫌にそう言うと彼は苦笑いしながらボールを速くした。
「…日吉くん日吉くん」
しばらくラリーが続いたころだった。
今まで無言状態だった切原が話し掛けてきた。
『なんだ?』
「今日日吉くんの誕生日だよねー」
『…そう…だが……』
実は今日は俺の誕生日である。
だから昨日跡部さんに「誕生日プレゼントだ」なんてチケットを渡されたときにはとても困ってしまった。
まあ苦笑いして「ありがとうございます」と言ったら「明日だってことはわかっている」と不機嫌に返されたが。
「…じゃあそろそろいくよ」
『…!?』
そう言い放つと同時に切原はボールを手前に転がした。
てっきりストロークのラリーが続くと思っていた俺は急いでネット際に行くが、やはり取れなかった。
『っは……て…めぇ…』
「ごめん日吉くん。
はい。誕生日プレゼント」
『っ!?』
唇に温かいものが触れる。
あまりに突然すぎて身動きができない俺に、あいつはさらに舌を入れてくる。
慌てて肩を押すと切原はにやりと笑って離れた。
「はっぴーばーすでぃ若」
14才初のキスが汗でしょっぱかったなんて俺とあいつしか知らない。
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