立海

□出会い始まり
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※中二
※出会い妄想話









「おい仁王!!」



教室中に響く怒鳴り声。
今まで騒がしかった教室は静まり、煩い教師の声だけが響いている。



「お前どこにいくんだ!」

『どこでもいいじゃろ。ってかいつものことなんだしそんな怒らんでも、』

「貴様、喧嘩売っているのか!!授業中だぞ!!!」



今にも胸倉を掴んで殴り掛かってきそうな数学担当教師兼、担任。
クラスにいる生徒達はつい数分前のざわめきを取り戻さず、ひたすら俺と教師を黙って交互に見た。



「だいたいお前は…」

『すいません。腹痛です』

「…は!?ちょ…待て!」



相変わらずなその教師の大声に耳を塞ぎながら、俺は後ろを振り向きもせずそそくさと教室を出て屋上に向う。
教師は追いかけても無理なことをわかっているのか、ただただ廊下から俺に向かって怒鳴っているだけだった。





******





「あー、やっぱ寒いのぅ」



屋上の扉を開けると12月の冷たい風が自分に向かって吹いてくる。
ホント寒い。
いや、予想はしていたけど。

俺は早足で給水タンクの裏に行き、持ってきた鞄からタオルケットとホッカイロを出し急いで体温の低い体を暖めた。



『あー…暖かい…』



親父臭い声を出しながら横に寝転ぶとコンクリートから伝わる冷たさに鳥肌が立つ。
鞄から小さい枕を出し頭の下に置くと、眠気に負けた俺はそのまま目を閉じて眠りにつく……はずだった。



「おーい。起きてますかー」

『……』



頭の上で声がする。
たぶん俺に向けてるであろう言葉。
だが寝たいんだ俺は。
この返答など、今の俺の頭の中では一秒もせず決まった。
…無視しよう。



「おーきーてーまーすーか」



…………寝てます。

仁王雅治は今夢の中にいるんだ。



「…なぁ起きてるんだろ」

『………』

「なぁ……」




しつこいなこいつ。

まあそろそろいなくなるだろ。




「…………だぁぁあ!!起きろボケ!!!!」

『っぐふ!』



腹にくる鈍い痛み。
しょうがなく目を開ければ、ぼやけながらもわかる赤髪。
あれ?こいつなんか知ってる気がする…。



「俺を騙そうなんてそうはいかねーぞ、コート上のペテン師」

『…』



そうやって呼んでくるってことはこいつテニス部か?

…駄目だ。名前が出てこない。



「なんか反応しろよな…。まあいいや。とりあえず俺はこれ渡しに来たんだよ」



赤髪は持っていたやたら大きい紙袋からたくさん箱やら袋やらを取り出す。
どれも可愛くラッピングされていて見ているだけで砂糖を吐き出しそうだった。



『なんや?コレら』

「そんなこと俺が聞きたいぜぃ」



俺の顔を見て二、三度ため息をついて紙袋から最後の一箱を出すと、奴は俺の隣に座って話し始めた。



「なんか今日お前の誕生日らしいじゃん。それでクラスの女子が集団で俺に渡してきて…。
はぁ。なんで俺が渡しに行かなきゃならないんだって話だろぃ。」

『ああ、そう』

「ああそうってお前…」



人がどれだけお前を捜したか…って今にも殴り掛かってきそうな目で言われて思わず彼と逆方向を向いた。
そんな俺を見て赤髪は再びため息をつくと、今だに横になっている俺の頭を何回も叩いた。



「ごめん。お前のせいじゃないのにな。これは俺の癖っていうかなんていうか…まあすぐ人のせいにしちまうんだよな…」



赤髪はまたため息をつくと下を向いて体育座りをし始める。
さっきとは反対にキノコでも生えてきそうなその辛気臭い顔にこっちまでテンションが一気にマイナスまで下がった。



「とにかくごめん」

『……でも人ってそんなもんじゃなか?』

「え?」

『そんなこと俺はそんなに気にしなくてもええと思うけどなぁ』



何となく出た言葉。

こんなこと言うなんて自分でもびっくりした。
ちらっと赤髪を見ると顔を紅く染めていきなり立ち上がった。
さっきと打って変わったその笑顔に俺は何も言えなかった。



「…俺仁王のことけっこー好きだわ」

『…ははっそりゃどーも』

「む。なんだよその反応」



ムッとしたように左の頬を膨らませ、丸井は上手い具合に俺の枕を抜き取った。
もちろん枕には俺の頭が乗ってたのでゴチンとコンクリートに勢いよく後頭部をぶつける。



『っ…』

「ははん!ざまぁみろぃ」
『お前…っ』

「悪い悪い……ってあ!お前やっと表情変えたな」

『は?』



そう言うと目の前の赤髪は何が面白いのかクスクスと笑い始める。

その彼の表情に、いつのまにか俺は怒りを通り越して笑いが込み上げてきていた。
思わずぷっと吹き出したように笑うと、比例するように彼は大きな口を開けて勢いよくげらげらと笑った。



「なんだよ笑えんじゃねーか」

『そりゃ当たり前じゃき。俺かて人間やからな』

「だったら最初っから笑えっての!なんかの病気かと思って心配したんだぜ」



今度は笑いとは反対にまた左頬を膨らまし拗ね始める。


表情がころころ変わる面白い奴だ。
なんとなく相手の頬っぺたを外側に引っ張ると案の定手を叩かれる。
そんな怒った顔も面白くて俺は息が出来なくなるくらい笑った。



「あー腹痛い。
そーいえばなんで仁王いつも一人なんだ?」

『…一人が落ち着くからかのぅ』

「ふーん……もしかして友達いないのか」

『……』

「え、ちょ、図星かよ」



どうやら奴は冗談で言っていたらしく本気でびっくりされた。
この見た目と性格から想像するに幅広く友人がいそうなこいつに、いまさらながら自分と正反対だなと思う。
ホントいまさらだが。



『別に友達がいなくたってなんの不便もないじゃろ』

「不便って…。
確かに不便じゃないかもしれねーけど、いた方が便利だぜ」

『…』

「………んじゃ俺が仁王の友人になってやる!」

『…はい?』



本日何回目だろう、このマヌケな声を出すのは。

まあ胸を張ってドヤ顔するこの男はもっとマヌケだと思うが。



「だーかーらー!俺が仁王の友人になってやるって!!
ちょうど今日仁王の誕生日だから“友人になる”ことがプレゼントな」

『俺は別にいらな、』

「お!そろそろ二限目始まるわ。サボりすぎて単位やべえんだよな…っていうことで俺は行くな!
そんで昼にここ集合、わかったか?」

『いや、だから…』

「じゃあまたあとで。
あ、知ってると思うけど俺の名前は丸井ブン太!シクヨロ!」




そう俺に言い放ち走りさっていく赤髪…もとい丸井。





こりゃ神様は大変めんどくさいプレゼントを渡してきたものだ。







<出会い始まり>
さっきまで灰色だった空は青く澄んでいた。


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