四天宝寺
□手
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八月。
そう、夏。
やはり夏といえば…
「そしてロッカーから覗くその色白い手は、自らその扉を掴み、ぎぃ…と……」
「キャァァァアア!!!」
「だだだ大丈夫や小春!俺が守ったる!!」
…“怪談”……らしい。
<手>
「その手は今も“何か”を探してんねん…」
「な…なにかって…?」
「その人、車に轢かれてバラバラになって死んでるらしいんスっわ……やから、バラバラんなってしもた自分の“身体”に決まっとるやろ」
「ひぎゃゃゃゃ!!!」
「しかもその人って元テニス部で、死んだのが大会直前だったもんやからテニス部の人間を羨ましがるんやって。
“お前の手足、俺にくれぇ…”言うて…」
「もう止めてぇえええ!!!」
騒がしい…
いつものことやけど…
暑いから怪談というのはなんだか違う気がするのは俺だけか?
逆に熱気とか篭る気がすんねんけど…
「なんや部長。
部長はこういうのは平気なんっスか」
『…姉貴と妹がそういうの好きやからな……まあ少しは耐性ついとるで』
「なんや、謙也さんみたいにびびってくだはったらおもろかったんに」
「び…びびってへんわぁ!!!」
「…じゃあとっておきの話を…」
またギャーギャー騒ぎ始める謙也。
それに比例して悲鳴をあげる小春。
あーあー、これじゃきりがない…
『みんな!もうそろそろ先生方来るで!
話は帰ってからにでもしいや』
一言いうとみんなは渋々帰る準備をした。
全国大会前でこの落ち着きのなさは大丈夫なんかとたまに思う
いや…でもこれが四天宝寺なんやと自分に言い聞かせることも少なくない今日この頃
でもまあみんな仲がいいのはいいことやけど
「そうだ部長」
『ん?なんや財前
謙也待たしとるんやから早くした方がええで』
「毎日二人で帰るってホンマラブラブやな」と笑ってやれば、財前はムスッとしながら「それを言うなら部長も…」とつぶやいた。
『で、用件は?』
「………部長…いいこと教えたりますわ」
『は?』
「さっき話してた怪談…実話なんっすわ
今部長の使ってるロッカーって、昔そいつが使ってたらしいっすよ」
『え…』
「ほな部長、また明日」
背中にぞわっと鳥肌が立つ。
俺が固まってる中、財前はしてやったりという顔で部室を出て行った…
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