立海

□piangere
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※赤→柳
※暗
※悲恋?







誰が泣く?








僕が泣く



君が泣く




何に泣く?








離してくれよと君が泣く…















<piangere>















『「死ぬほど好き」』



「…とお前は言う」






ドキリ


心臓が鳴った





『…なーんだ』



「………なんだとはなんだ」


『てっきり柳さんが本気で言ったのかと思った』


「…そうか。
でも残念だが俺はお前が嫌いだ」





眉一つ動かさず能面な柳さんの顔
俺はそれをじーっと見つめる




"俺は柳さんがスキ"
でも
"柳さんは俺がキライ"


なんとも悲劇的な話だろう

俺が何度愛の言葉を紡ごうが彼からくる言葉は拒絶ばかり





『なんで俺の思いが伝わらないの?』


「知るか」


『俺は柳さんのそばにいれるだけでいい』


「誰もいなくていい」


『柳さん好き。愛してる』


「黙れ」


『柳さんがいないと死んじゃう』


「死ね」


『柳さんとだったら死んでもいい。あ、柳さんの死体って見てみたいかも…きっと綺麗なんだろうな』


「気持ち悪い」


『大丈夫?』


「お前がいるせいで常に大丈夫じゃない」


『じゃあお詫びに柳さんをお嫁にとるね』





ガタン



椅子の音が鳴る





『いい加減やめてくれ』


「何を?」


『自覚しろ。
何度も言うが俺はお前が嫌いだ』





ズキリ


今度は心臓が痛む





「ねえ柳さん…なんでそんなこと言うの?」


『…』


「俺はこんなにあんたを愛してるのに」




にこりと笑うと柳さんは後ろを向いて扉に向かって歩きだす


俺は後ろから柳さんの腕を引き、床に押し倒した
頭を床にぶつけたのか顔を少し歪めた柳さんはやっぱり美しかった





『柳さん好きな人いるの?』


「いない。いいから早く離せ」


『嫌だ』


「離せ」


『好き』


「離せ」


『愛してる』





柳さんが黙る

黙って俺を見る

俺だけを見る





「…可哀相な奴だなお前は」





呆れたように俺に言い放った柳さんの顔はいつもどうり無表情だった




『可哀相でもいいっすよ』




手の拘束を離しそっと柳さんの首に手をやる

そのまま力をいれると無表情から苦しそうな顔に変わる




『ああ…やっぱりどんな柳さんでも美しい』





しばらくすると、酸素が足りないのか柳さんの手からは力が抜けていき、生理的涙を流していた


そろそろやばいと思い手を離すと、柳さんはぐったりした様子で咳込み始めた




『あはっ柳さん可愛い』





こっちを睨めつけながら「死ね」と悪態つく柳さんを見たら背中がぞくぞくする
ホントこの人は可愛くて美しくて俺を興奮させる




もうちょっと遊ぼうと思ったそのとき、この空間とは不釣り合いなバイブ音が鳴った





『ん?ああ親から電話だ
じゃあまた明日ね柳さん』



「…もう止めてくれ」


『なんか言ったっすか?』





弱々しく俯く柳さんをよそに、ククッと喉で笑いながら扉を出た

外は暗く一時間近く柳さんといたのだとわかる
携帯で時間を確認するともう8時だった







『…あれ?雨?』






不意に頬に冷たさを感じ、手をやると濡れていた




だが雨は降っていない

















誰が泣く?







僕が泣く



君が泣く






何に泣く?












愛してくれよと僕が泣く

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