四天宝寺

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「謙也さん……」



『ん?なんや光』



「…やっぱいいっすわ」



『…』






光……その言葉…今日でもう10回言ったで


















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「…」

『…』




この沈黙も今日で10回目

誰もが見ても一発で気付くであろう光の異変


はあ…今日はなんなんや





『光…どこか調子悪いんか?』


「いえ…」


『じゃあさっきっからどうしたんや…なんか俺に隠し事なん?』


「か…隠し事なんて…してないっスわ」




吃りながら目線を下に落とす光…





しっ…しらばっくれるな!

ああ神様もうどーでもええんで早くこの光を元の光に戻しといて下さい




「謙也さん…」

『ん?なんy』キーンコーンカーンコーン



聞き慣れた鐘の音
やっぱ休み時間って短いな





「…俺移動教室なんで、もう行きます……」


『あ…ああ』




なにも言う暇もなく光はそそくさと行ってしまった…




あっそういえば、今日は部活ないからあと二限で帰りだったっけ

そんで今日は前々から光と帰る約束をしてた日
…なんだか帰りが不安になってきたわ










********









『あー…疲れた』



疲れたーなんて言ってるけど本当はずっと寝てただけ
ホンマ、あのお経みたいな話に耐えられる奴がいたらお目にかかりたい





「お疲れさん!」


『どわっ!!』




いきなり肩を押され机にでこをぶつけた
俺のクラスでそんなことするやつはだいたい…





『白石…?』


「ははっなんで疑問形なん?」


『いや…やって今日白石のこと朝会っただけでその後まったく会ってなかったし…』


「まあちょっと忙しかっただけや。それより下で財前が待っとったで」


『ひ…光が!?』


「ああなんか謙也に用事あるみたいやで。HR終わったら早く行きぃ」



『わ…わかったわ』





やっぱりいつも通りには帰れなさそうやな










*********









校門に行くと、壁に寄り掛かりながらケータイをいじる光がいた




『待ったか?光』


「…けけけ謙也さん?!!」




軽く肩を叩いただけなのに俺を見た瞬間のこの驚きよう…
やっぱなんか俺に隠し事的なのがあるんか




「あの…今日掃除当番じゃないんっスか」


『それなら光が呼んでるって白石が言うとったから他の奴に代わってもらったわ』


「しっ…白石部長が!?」


『おん』




なんか赤くなったり焦ったりと今日の光は忙しいなぁ

まあいつも仏頂面やからこういうのもたまにはええかなって思うけど…





『とりあえずなんや?用件は』


「…帰りながら話ましょ」


『…おん』




俺が頷くと同じに俺らは歩きだした…










*********









『…』

「…」




あれから歩いて5分
早速なんやこの雰囲気は…

光もボーッとしながら下向いてるから話すチャンスがあんまあらへんし…



なんなんや!
言いたいことあんなら早く言えばええんに…








…もしかして朝から言いたかったことって別れ話?
だから言いずらかったとか

いや、そんな訳はきっとないはずや


俺は意を決して光に話しかけた




『朝からなんなんや光?はっきり言ってくれんと辛いわ…』


「…」


『…光?』




呼びかけにも答えず下を向いて黙る光



ま…まさか?!


ホンマに別れ話…?




『ひ…ひか「謙也さん!!!」はっはい!!』


「これ…」




すっと俺の目の前に出された包み

光はというと下を向いたままこっらを見ようともしない


アカン…展開が読めへん




「今日…何の日かわかりますよね」


『え…今日って…三月の十…あ!』





思い出した。ハイ。
思い出しました




今日、俺の誕生日だ


誰にもなんにも言われんかったから気付かなかったわ




「まさか…忘れてた?」


『あ…ハイ』


「…予想外っすわ」




少し顔を上げてため息をつく光

ホンマにスミマセンデシタ…




・・・

ってことは




『それ…俺への誕生日プレゼント?』


「そっすわ…ただの靴ですけど」


『…』


「謙也さん?」




『光!!!!』


「わっ」




隣を人が通ってるのにも関わらず光をおもいっきり抱きしめた

嬉しすぎる…誕生日覚えとったんが光だけでも嬉しい




しばらく抱きしめてると光が小さく「外」と言った
やばい…




「ひっ人前でいちゃつくとかあれほど止めてくださいって言うたやないですか!!」


『スマン光…』


「とりあえず…コレ、受け取とてもらえます?」


『お…おん』



「来年も再来年もこの先ずっと、謙也さんの誕生日くらい忘れず祝ったりますよ」



『く…くらいってなんや!』




今日一度も笑わなかった光が見せた笑顔は俺が見たなかで1番綺麗だった










最高のBirthdayを君だけと…



HAPPY BIRTHDAY 謙也





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