人獣シリーズ

□黒猫、拾いました
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俺は、捨て猫だとか捨て犬ってのは捨てるヤツも馬鹿だけど拾うヤツもなかなかの馬鹿だと常々思っていた。





でも、うん、




謝るよ


世界中の動物愛好家さん、今まで散々馬鹿にしてすいませんでした



確かに拾っちゃうね、これは






なんだ、この可愛い生き物は!!!!














今、俺の目の前には黒髪黒目に猫耳を生やした少年がいる


背後から伸びる尻尾もゆらゆらと揺れている
身長は人間でいうと4、5歳くらいだろうか

くりっとした大きな瞳がじぃっとこちらを見つめているのだ



「……なぁ…」



赤くて小さな唇から紡がれた声は心地好く俺の耳に響く



「…あんた、暇なの?」



いや、暇ではない
絶賛仕事中だ
そう、仕事中……………だけど!!


「暇だぜ?」


ついそう答えてしまった
そうしたら目の前で幼い顔がパァッと輝いた。うん、可愛い
もう仕事中とか関係ないね


「じゃあさ、おれと遊ぼ!!」


おっきな瞳をキラッキラさせている黒猫少年を自分の膝に抱き上げる
俺は今がはじめての張り込み中だとかそんなの全部頭の片隅に追いやって少年からのお誘いに乗った














「……き……!」



いや、ホントにあれは犯罪的に可愛かった
潤んだ瞳で遊ぼ?なんて言われたら断れねぇよ。むしろ断れるヤツがいるならお目にかかりたい。ま、いねぇだろうけどな。可愛いかんな、アイツ



「…ぃ!…ゆき…!」



あぁーマジで可愛いよなー
フリフリのスカートとか着せてぇなぁ。あ、俺のシャツ一枚とかでもいいかも



「おい!!御幸!!」
「ん?」


ふと名前を呼ばれて顔をあげれば目の前には黒髪黒目に猫耳を生やした青年
出会った頃よりは随分育ったが相変わらず可愛い。今、少し怒ったようにこちらを睨んでいるがそんなの俺を煽るだけだってコイツは未だに気づかない


「どうした、栄純」
「…………」
「栄純?」
「………ずっと呼んでた…」



ぼそっと呟かれた言葉に尖った唇
どうやら拗ねていたらしい
コイツほど俺のツボを完璧に押せるヤツ他にいねぇよ


ホントにたまんねぇ



とりあえず機嫌を直してもらわねぇとな


「えーいじゅん、拗ねんなって」



そっぽを向くほっそい体を腕の中に抱き寄せる
頑としてこちらを向かないくせにくたりと体を預けてきた


「…………」
「なぁ、」
「……………拗ねてないもん」
「だってずっとお前の事考えてたんだぜ?」
「……はぁ?」
「お前がウチに来た日のコト」
「………ふーん、…別にもう忘れたし」



お前ね、そんな事言ってるけど耳は嬉しそうにピクピクしてるし尻尾だってゆらゆらしてんだぜ?まぁそれで隠せてる思ってるトコがまた可愛いんだけど。
けど、やっぱ顔は見たいし忘れたって台詞は気に入んねぇな…



だから、





「栄、今だから教えてやるんだけどな」
「……なんだよ」
「俺、あの日仕事中だったんだよね」
「………………………は?」



案の定慌ててこっちを見た栄純はたっぷり5秒経ってから間抜けな声を出した



「だから、仕事中だったの。張り込みしてた。しかもはじめての。」



追い討ちをかけるように言えば面白いくらいにテンパっている



「え、…えぇ!?……だ、だってあんたあん時暇だぜって!!」
「やっぱり覚えてんじゃねーか」
「え、?……………あ。も、もしかして嵌めたのか!?」



自分の失言に気づいたらしい栄純は毛を逆立たせてこちらを見てきた


「いや?仕事だったってのはマジ。後で哲さんに怒られたし、」
「ぅ、ご、ごめ………」
「簡単に拾うんじゃない、って」
「え?」



固まった栄純からはそっち?って声が聞こえてきそうだ。実際当時の俺もそう思った



「ま、でも俺はあの日張り込みで良かったよ」
「?」
「じゃなきゃお前に会えなかったしな」


澄んだ黒の瞳を覗き込んでニヤリと口角をあげてやれば一瞬で真っ赤に染まる頬





そこに1つ




小さな口づけを落として








更に赤くなる可愛いヤツを力いっぱい抱きしめた







○黒猫、拾いました
(不吉?とんでもない!天使です)








人獣シリーズ第一話
御幸と栄純の出会いでした。

今後の話はゆるーく繋がりながら書いて行けたらなぁと思ってます

正直、雪海が好きなカップリングをひたすら詰め込みたかったのと、栄純に猫耳生やしたかった事から生まれた話なんで非常に楽しく書いてます
恋愛要素は低めかもしれませんが甘々にしていきたいですね←


感想、希望など頂けるとすごく喜びます!!


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