彼の話を聞く

□大きくなったら。
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下から見上げてくるあなた。

笑顔で言った。
“あのね,帯人。
あたしが大きくなったらね,帯人のお嫁さんになるね!”


うわぁ…。

“……。”


“?…どうしたの,帯人は嫌っ?”


嬉し過ぎて何にも言えない。


ただぎゅっと抱きしめると

当たり前の様に首に
小さな腕を回してくる。

それだけで,幸せだった。


“…嫌なんかじゃありません。ただあなたは人間だから…
ぃぇ,なんでもありません。
もし10年後も
あなたがそれを望むのなら,俺は一生,あなたの為だけに尽くしますよ”



ほんのちょっと
気を緩めたのが駄目でした。

次々と涙の粒が溢れだす。

“え…。わぁ!どうしたの!?
ごめんね,ごめんね,泣かないでっ!”



“違うんです,嬉しいんです…”




そして10年後を考えると,


寂しい。



“よし!じゃあ,帯人が泣かされないように,ずっとあたしが守ってあげるね”

勇ましく見えた。


“…ふ。はははっ”

“なんで笑ったの?”

“凄いなぁ。守ってくださいね”

“うん!”

元気に頷くマスター。






本当に…あなたは。


俺に期待ばかりさせる。


まだ子供だって分かってるのに。

明日の夜,テレビを見る頃には
将来の夢位,変わっているかもしれないのに。




あなたの一挙一動に,


こんなにも俺は,

驚いて,悲しんで,本心から笑えている。











“ねぇ帯人?”

“…なんですか?”






“きっと10年後も、
大好きだよ”

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