月は歪んだ

□37:月は歪んだ
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今日はお母さんのお見舞いの日。
さすがに沖田さんを病院に連れて行くわけにも行かないから、家で留守番してもらうことにした。

そりゃそうだ。連れてきたところでお母さんになんて説明すればいいんだ…



『お母さん、来たよ〜』

「あぁ、美憂。おはよう」

『おはよう。下着類、ここに置いておくね。洗い物ちょうだい?』

「はい、これね。ありがとうね。」


洗い物と綺麗なものを入れ替えて、イスに腰掛ける。


『お母さん最近調子よさそうだね』

「そうなの。もう退院できるって」

『えっ!?本当?いつごろ?』

「明後日―――月曜日かしら。」

『えっ!ちょっと!聞いてない!
病院の人、何も言ってなかったんだけど…?!』

「娘には私から伝えとくって言ったからね。お母さん、もう入院の常連さんだから…」

『も〜〜〜!びっくりさせないでよ!』

「退院したらどこか食べに行こうか。久しぶりにおいしいもの食べたいわぁ…」

『お母さん、今まで病院食なんだから、あんまり重いもの食べないほうがいいんじゃない?胃がびっくりしちゃうよ?』


なんて軽口をたたきながら、お母さんが久しぶりに帰ってくることを喜んだ。


『じゃあ私そろそろ帰るね。退院は月曜日ね、もう夏休みで休みだから迎えに行くから』

「うん、ありがとうね」



病院を出ての帰り道。

ふと気が付いて足を止めた。



お母さんが家に帰ってくる。

―――沖田さんのいる、あの家に。



『どうしよう…』



お母さんになんて説明すればいいんだろうか。

“彼氏です”?
いやそもそも彼氏じゃないし、彼氏(親非公認)が実家に住み着いてる状況って一体なに?


“気が付いたら家で倒れてた人”?
“タイムスリップして、行く場所がない人”?

…だめだ、怪しすぎて話にならない。


そんな人を家に泊めていたなんて知ったら、お母さん怒るかな…



でも…沖田さんには行く場所がない。

元の時代に帰りたくても帰る方法も分からない。


お兄ちゃんのところへ行くにしてもお父さんがいる。
ああこんなときお兄ちゃんが一人暮らしだったらよかったのに…


(どうしたらいいの…?)


お母さんが退院できるのはすごく嬉しいはずなのに、素直に喜べていない自分がいた。

















(どうしよう…)
(でも、現代人じゃない沖田さんを放り出すわけにもいかないし…)
(私の部屋から出ないようにしてもらう?)
(いや…それでも無理があるよね…)




どうしたらいいの…?


to be continue...
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