月は歪んだ

□08:月は歪んだ
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『ううっ…』

「どうしたの?美憂ちゃん?」

『…いえ…なんでもないです…』


周囲の視線が痛い。
私と沖田さんは今、外に出ている。
沖田さんは俗に云うイケメン。
そんな沖田さんと買い物なんて…


「あら!美憂ちゃん!そちらは彼氏さん?」


うう、近所の田中さんだ。
いつも気軽に話しかけてくれる五十代の優しいおばさん。
しかし、今話しかけられるのは都合が悪い。
沖田さんをなんて説明しよう?
兄弟?…ダメだ、私には兄しかいないって知られてる。
友達?……え、年上の男友達?…私の??


『い、いえ…私のっ…従兄弟です!』

「あら!そうなの?ずいぶんかっこいい方だから、美憂ちゃんの彼氏かと思ったわ」

『いえいえ…』

一番疑われにくそう…かな?


「初めまして。美憂の従兄弟の沖田です。
美憂がお世話になってます。」


え。
お、沖田さん…?


「あらあら、お世話なんて!」

田中さんは、うふふ、と嬉しそうに笑った。


「それでは、僕ら人を待たせているので。」

「あら、呼び止めちゃってごめんなさいね。」

『いえっ…』


沖田さんは田中さんを軽くあしらい私の手を引いた。



『……驚きました。』

「何を?」

『……その…』

「僕が助け船出したこと?」

『…はい。』

「まぁ臨機応変に、ね?」


沖田さんは振り向いてニコリと笑った。
やっぱり沖田さんは、私なんかより大人なんだな。















(沖田さんてすごい人なんですね)
(誉めても何も出ないよ?)
(え…人の好意は素直に受け取って下さいよ)
(えー??)
(…えー??ってそんな…)




子供みたいですよ?



To be continued...
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