月は歪んだ

□02:月は歪んだ
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『ただいまー』


誰もいない家に声をかけた。

部屋に入ろうとドアを開けた
そして私は停止した。


『……え?』


え、倒れてる…!?
男の人だ。

泥棒、なの?!
…倒れているけど。

泥棒だったらどうしようという恐怖心と、どうしたのだろうという好奇心が葛藤する。

勝ったのは好奇心だった。


『あの…大丈夫、ですか…?』

うつぶせで倒れている男の肩を叩く。
起きる様子はない。

とりあえず寝かせようと、客間の布団を出した。
私一人の力じゃ一般男性を持ち上げるなんて不可能。
申し訳ないが軽く引きずって寝かせた。

そして仰向けにして初めて気がついた


『かっ、刀…っ?!』


男は刀を二本も挿している。
男が起きないかビクビクしながら刀を外した。
寝るのを妨げるし、いきなり斬られたりしたら、たまったもんじゃない。
男の目に入らないところに置いた。

一段落ついてから、まじまじと男を見た。
どうやら男は怪我をしていたわけではないみたいだった。


『…随分古風な格好…コスプレ?
それに、あの刀本物?
本物だったら…銃刀法違反だよね…。』

そう、よく考えたら違反だ。
ものすごく後悔した。
もしかしてこの男…泥棒ではなく人殺しではないかと。

ふと、ある考えが頭を過る。

もしこの人が昔の人だったら…?

合点がいく。
時代劇のような格好も、刀も…

いや、でもタイムスリップなんて…あり得ないだろう。


そしてもう一つの考えが浮かんだ

『そっか…!きっとこの人、大河ドラマの俳優さんなんだ。
よく見ると肌も綺麗だし、スタイルもよさそうだし…』


私は納得した。

しかし例えどんな理由があったとしても、私ん家にいたという事実は消えない。
あえて考えないことにした。














(だって可笑しいもん)
(不法侵入だよ!)
(顔がいいからって)
(私が、)



赦すと思いますか?




To be continued...
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