月は歪んだ

□23:月は歪んだ
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「……で?」

「『…で、って?』」


あれ?前もこんなことなかったっけ?
デジャヴ?


「…いや、ハモられても困るんだけど…。

ゴホン…沖田君、君は帰る術を知らないと言うが、いつまでここに居座る気だね?」

「『……は?』」


お兄ちゃんは腕を組んで、どこぞの哲学者のように話し出す。

いや、俗に言う“娘をお嫁に出す父親”のような感じだろうか。


「いやー、兄としては心配な訳だよ。
青春真っ最中の妹が、こんなイケメンと同棲だなんて!」

『同棲だなんて…ただ一緒に住んでるだけじゃない。』

「ま、それを同棲っていうんだけどね、美憂ちゃん。」


……そうですね、沖田さん。



「…美憂が男と一つ屋根の下…しかもイケメン…嗚呼…!俺だって彼女と同棲なんてしたことないのに…!」


お兄ちゃんは頭を抱えて何やらブツフツと呟いている。

そしていきなりテーブルをダンッと手で叩いて叫びだした。



「ゆ…ゆゆゆゆゆ許さん!お父さんは断じて許さんぞ!」

『いや、あんたはお兄ちゃんでしょうが。』


何の昼ドラの真似ですか。


「嗚呼ッ!…いつから美憂はこんなに我が儘になったんだ…?
昔は“おにいちゃんとけっこんするー!”なんて言ってたのに!!」

『言ってないから!!
それ言ったのお父さんにだから!!』

「へぇ…美憂ちゃん、お父さんと結婚したいんだ?」

『いやいやいや!昔の話ですから!
まだ物心付いてない時の話ですから!!』



…って、何でこんな話になってるの?




「よし!分かった!お兄ちゃんもここに住もう!!」

『…何が分かったのか知らないけど、用がないなら早く帰ってね?』


にっこり、真っ黒い笑みを顔に張り付けて。

嗚呼…最近、お兄ちゃんにこの対応が多くなったかもしれない。



















(美憂ちゃんのお兄さんって面白い人だね)
(…アホな兄ですみません。)
(いいじゃない、楽しそうだし。)
(ははは…って、そもそも)




何しにきたんですか?


to be continued...
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