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□監禁生活
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●監禁生活1日目●
目を開けて、まず最初に思ったことはここどこ、だ。
全く状況が理解できないので、昨日のことを思い出して記憶を整理してみようと思う。
まず起きて、仕事に行って、散々上司に文句言われてむかついたからお茶に雑巾の絞り汁混ぜてやって…それから、先輩と昼食とって、書類コピー頼まれて、コピーしたらやり直しって言われてやり直して、仕事が終わって、電車に乗って、それから、それから…
だめだ、ここから思い出せない。ということは、帰る途中に何かがあったんだ。頭がずきずきして痛いから、きっと頭を何かで殴られて気絶させられた、という風に考えていいかな。
次に、ここがどこなのかということを考えよう。
窓なし、ドアあり、裸電球、コンクリートの壁に床。と、私が今寝ているベッド(ちょっと固くて痛い)。
なんか、質素だなあ。贅沢はあんまり言っちゃいけないかもだけど、もっと可愛い部屋で監禁してもらいたかった。まあ、生かされてるだけましかなと考えることにする。
最後に自分のおかれている状況を考えよう。
とりあえず、五体満足。どこも取れてないし、何かがくっついているわけでもない。首に首輪がついてるわけでもなく、手足に枷がついているわけでもなく、縄で縛られているわけでもなく…いたって自由だ。
何が目的なのか分からない犯人だ。…身代金目的かな。いや、でも私どっかの会社の社長の娘とか、マイケルの隠し子とかそんなんでもないし、普通の家庭で育ってきたからそんなにお金だせないし…。
「何が目的なんだろう」
今日は考えるのもうやめよう。もとから私は頭脳派ってわけでもないし。とりあえず犯人は私を殺そうとか傷つけようとか考えてなさそうなことが分かったので、寝ることにする。…明日また考えよう。
●監禁生活2日目●
久しぶりによく寝ました。最近仕事のせいで全く寝れなくて疲れてたからちょっと犯人に感謝する。
「おはよう」
低い男の人の声がした。
ゆっくり、目を開けると(犯人だと思われる)男が私の顔を覗き込んでいた。
「お、おはようございます…」
よく眠れた?と聞かれたから、はいと頷くと男はそう、と言って私の頭を撫でた。
「…あの」
「なに」
「何が、目的なんですか」
「特に何も」
いやいやいや、それはない。一番言っちゃいけないことだと思う。人さらっておいて特に何にもないなんて理由、許されないだろ。
「なんとなく、そんな気分だった」
「意味がわからない」
「君からしたらそうかもね。でも俺には意味がちゃんとある」
「自己中って言われたことありません?」
「あー、ないない」
「じゃあ今言います。自己中ですね」
「うーん。そうかも」
しばらく私の頭を撫でてから、また来るねと言って男は部屋から出て行った。
何がしたかったんだよ、あの人。狂ってるって言えば狂ってるかもだけど、意外に普通の人間だった。Vネックの黒いシャツに、黒いコートに黒いズボンに何色にも染めていない黒い綺麗な髪。なんだろう、何一つ特徴がない人だったけれど一度見たら忘れられないなあと思った。