4剣

□呪われた鏡
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その頼み事とは、思った以上に深刻なものだった。

話によると、その鏡は街外れの教会のものらしい。

教会といっても、神父もいなければ祈るための聖像もないそこは、教会としての機能を果たしていない。

『忘れられた教会』と近くに住む住人たちの言うそこは、子供たちの秘密基地として使われていた。


「第一の犠牲者は教会で遊んでいた子供だった。布の被せられた鏡を見つけたその子は、布を取り去ってその鏡に触れたらしいわ」


そしてすぐに意識を失った。

「一緒に遊んでいた子たちの証言よ。その子は…まだ目を醒まさないの」


「…他にも犠牲者が?」

「えぇ、第二の犠牲者は私の指示で鏡を回収しに行った城兵。誤ってか、鏡に触れてしまったみたい」

「じゃあ鏡に魂をとられるっていうは…」

「…嘘ではないわ」


ゼルダに連れられて来たそこは、儀式に使われる場所であった。

2年前、巫女たちとゼルダがシャドウに連れ去られた、その場所だ。

部屋の中央には身の丈より大きな黒い鏡が置かれていた。


(…あの鏡は…)


「見覚えがあるでしょう?」

ゼルダはそっとリンクの手を握った。

彼女の手は氷のように冷たく、リンクははっとしてゼルダを見遣った。

「ゼルダ…?」

「貴方はこの鏡を知っている。壊そうとしたはず」

リンクは彼女の蒼の瞳からとっさに目を背けた。


「…わからない」


見たことはある。

おそらく2年前の旅のなかで。

ひとりの人間が4人に分裂したせいか、もとに戻った後、4つの記憶と経験は靄がかかったように、はっきりとは思い出すことができなかった。

部分的な記憶。

4の記憶が断片的に繋がり、ひとつの物語を作りあげていた。

けれど。



「『闇の鏡』…?」


熱い空気と硫黄の匂い。

罪悪感。

誰よりも、自分が憎い。



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