星彩のレゾナンス

□第3章 解かれる呪縛
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奏は二人に連れられ、空条家に訪れていた。


(お、大きい・・・。)


目の前に立つ我が家の倍の大きさはある日本特有の趣がある豪邸に思わず圧倒する。


「あはは、やっぱ驚くよねえ?アタシも初めて承太郎の家に来た時も滅茶苦茶驚いていたっけ。」

「貴方も?・・・えっと。」

「あっそう言えば、アタシの名前まだ教えてなかったね。
 アタシは天野アリサって言うの。宜しくね、不知火さん。」

「おい、無駄話は後でしろ。」


先に門の中へと入っていく承太郎に奏は急ぎ足、アリサは自分のペースで各々門をくぐった。

少し歩いて漸く玄関に辿り着いた。
庭まで広いとまたしても驚きながら、靴を脱ぎ承太郎とアリサの後ろを付くように並ぶ。
担がれている花京院を心配し部屋を過ぎようとすると、その部屋には写真立てを抱きしめているホリィが居た。


「今・・・息子と心が通じ合った感覚があったわ。」

「考えてねーよ。」

「聖子さーん、お邪魔しまーす。」

「ど、どうも。」

「きゃあああああ!」


まさかのご本人登場にホリィは悲鳴を上げて持っていた写真立てを落としそうになった。
今のを他人に見られるのは相当恥ずかしかっただろう。
奏は何だか声を掛けたのが申し訳ないと思ってしまった。


「じょ・・・承太郎にアリサちゃん!が・・・学校はどうしたの?そ・・・それにその、その人は!
 血・・・血が滴っているわ、ま・・・まさか、あ・・・貴方達がやったの?」


心配そうに我が子とその友人を見る。


「てめぇには関係のないことだ。」

「承太郎、また聖子さんにそんな言い方して。」

(空条くんのお母さん?随分と若く見える・・・。)

「あら?貴方はもしかして承太郎とアリサちゃんのお友達!」

「えっ?」


自分の存在に気付いたホリィが奏に顔を近付ける。
ニコニコと愛嬌のある笑みに奏は本当にあの承太郎の母親かと疑ってしまう。
いや、そんな疑問などは置いておこう。
今はホリィに聞かれた質問をどう答えるかだ。
正直に貴方の息子を殺しにきた者ですなんて言えるわけないが、会って間もない彼を友達と言って良いのかと答えに迷う。


「俺はじじいを探している・・・広い屋敷を探すのに苦労するぜ。」

「聖子さん、ジョセフさんは茶室に居ますか?」

「え、えぇアヴドゥルさんと居ると思うわ。」


ジョセフがいる場所を聞くと承太郎は茶室へと向かう。
ホリィは自分に何も話してくれない息子を悲しそうにジッと見つめる。


「あの天野さん・・・私は空条君のお母さんに救急箱を貰ってから茶室に行っても構わない?」

「それは良いけどさ、大丈夫?」

「?」

「承太郎の家、見ての通りとんでもなく広いだから道に迷わないかなって心配しているのよ。」

「・・・空条君のお母さんにちゃんと道を聞くから大丈夫だと思う。」


自分は極度の方向音痴などではないが、やはり見慣れない場所に来てしまうとそれなりに不安はある。
それを察したのかアリサは苦笑する。
じゃあまた後で、と一言を言い残しホリィに軽く会釈をすると歩いて行ってしまう。


(承太郎ったらママには何も話してくれないのね。
 こんなに・・・こんなに・・・貴方のことを心配しているのに。)


母だからこそ我が子への愛は人一倍強い。
どんなに反抗的な態度を取られようともホリィによっては承太郎は掛け替えのない大事な息子。
そんな大切な息子が自分を頼ってくれないことはどれほど悲しいことだろう。


(でも、本当は心の優しい子だってことはちゃあんと見抜いているんですからね・・・。)


誰よりも承太郎を知っているホリィは優しげに微笑んだ。
すると承太郎がホリィに声を掛けた。


「今朝はあまり顔色がよくねぇーぜ、元気か?」

「イエ〜〜イ!ファイン!サンキュー!」


明るい声でVサインをした。


「ふん。アリサ、とっとと行くぞ。不知火、お前も早めに来い。」

「うん、典明のことよろしく。」


承太郎とアリサはそのまま茶室へと足を進めた。


「・・・空条君ってお母さん想いな人ですね。」


ぶっきらぼうな言い方だったが、それでも承太郎が母親を大切に想っていることが自分でも分かった。

そう言うとホリィはまた嬉しそうに笑う。
浮かべるその笑みが奏にはとても綺麗だと素直に思えた。



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