星彩のレゾナンス

□第1.5章 スタンド
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カシャッとシャーペンの芯を出す音と共に真っ白なノートを開いた。
教卓に立つ教師が喋りながらチョークで黒板に数式を次々と書き込んでいく。
それに釣られるように席に座っている生徒達が一斉にそれをノートに書き込む。


(・・・。)


一人の女子生徒が動かしていたシャーペンをぴたりっと止め、気だるそうに頬杖をついた。

ツインテールに結ばれたウェーブがかかった色素の薄い栗色の髪。
左右の髪を二本のピンで留め、綺麗に切り添えたパッツンな前髪。
光の加減で変色するヘーゼル色の瞳。
外人の血を強く引いたであろう日本人離れした端麗な容姿。

彼女は天野アリサ。
この学校ではある意味で有名な生徒である。


(アイツが留置所に入ってはや数日・・・。)


持っていたオレンジ色のシャーペンを器用に指で回す。


(毎度のことだけど、聖子さんの話だと今回は色々と違いみたいだしなぁ。)


くるりと回したシャーペンを再び手に収める。

長々と語り続ける教師の話などアリサの耳には入っていない。
今のアリサの頭はとある人物のことで一杯だった。


(・・・次の時間、授業抜け出して行ってみるか。)


考えがまとまったと同時に教師が不審そうな顔でアリサを見ていたので適当にノートに数式を書き始める。
教師は特にアリサを指摘などせずに、そのまま授業を続行。


(早く終わってよね。)


面白みがない授業が始まって約数十分後。
チャイムが校内に鳴り響いた。
まだ説明足りないかのような顔をする教師だが生徒達はお構いなしに教科書などを仕舞うのでため息をつきながら委員長を見た。
教師と目が合った委員長は立ち上がり「起立、礼。」とお決まりの号令を言い、漸く授業は終了した。

アリサは教師が出て行くのを見届けると、さっさと教科書やペンケースなどを鞄に詰めていく。
前に座っていた友人がそれに気付き、声を掛けてくる。


「ちょっとアリサ、まだ授業があるってのに何帰る準備してんのよ?」

「ごめん、アタシ早退するから先生には適当な理由付けといて。」

「はっ!?ちょ、アリサ!!」


友人の呼び声など気にせず、アリサは学生鞄を持って勢いよく教室から出て行った。

廊下に出ると沢山の生徒達がアリサを見て騒いでいたが気にせず走り続けた。

げた箱に着くと素早く上履きから靴に履き替えて、面倒な教師にバレないように裏門から学校を出て行き、アリサはある場所へと向かった。



*****



辿り着いた場所は警察署。
よっぽどのことがない限り絶対に自分から来たりなどしない場所にアリサはやって来た。


「・・・さーて、アイツの顔でも拝みに行きますか。」


警察署へと一歩踏み出すと、一台のタクシーが停車した。
ガチャリッとドアロックが解除され、自動でドアが開かれるとタクシーから三人の乗客が降りた。
その内の一人であるイギリス系アメリカ人の綺麗な女性と目が合い、思わず目を丸くした。


「えっ聖子さん?」

「あっアリサちゃん!」


女性の名前はホリィ・ジョースターで、また愛称から聖子とも呼ばれている。
そして、アリサがいつもお世話になっている人物である。

ホリィは無垢な笑みを浮かべて、アリサに飛びついた。
結構勢いがあったようでアリサは一歩後退して、ホリィを受け止める。


「嬉しいわ、アリサちゃんも承太郎が心配で会いに来てくれたのね。」

「えぇまぁ、承太郎の奴何で留置所に出ないのかが気になったんで来ちゃいました。」

「本当にアリサちゃんみたいな子が承太郎のお友達で良かったわ。
 きっと承太郎もアリサちゃんに会えば此処を出てくれるかもしれない!」

「あはは、だと良いんですがね・・・ところで、そちらの方々は?」


ちらりとホリィの後ろに居る二人に視線を向ける。

褐色の肌にアンクが描かれた独特的なアクセサリーと金色の腕輪を身につけたアラブ系の男性。

厚いロングコートを羽織った身長が2m近くある体格が非常に良いイギリス人の男性。
このイギリス人の男に至ってはアリサがよく知る人物の面影がある。


「あぁそう言えばアリサちゃんはパパに会うのは初めてだったわね!」

「えっ?パパ・・・えっこの人、聖子さんのお父さんですか!?」


マジか?と口をこぼすがアイツと似ている理由がこれで合点ついたと納得が出来た。
しかし、孫を持つような年齢にそぐわぬ筋骨隆々としたジョセフに思わず二度見してしまう。


「えぇそうよ。あっパパ、この子は承太郎のお友達の天野アリサちゃんなの。」

「ほぉアイツに女友達とは珍しい、わしはホリィの父親のジョセフ・ジョースターじゃ。宜しく、アリサちゃん。」

「私はモハメド・アヴドゥル、ジョセフさんの友人で職業で占い師をやっている。宜しく、お嬢さん。」

「えーっと、ジョセフさんとアヴドゥルさんですね。こちらこそ、宜しくお願いします。」


お互いに自己紹介を済まし、握手を交わす。
しかし、遠い国からわざわざ日本に来た理由が気になり、アリサは二人に質問した。


「因みにジョセフさんとアヴドゥルさんがこちらに来たのって、やっぱり・・・承太郎の件で?」

「察しの良い子じゃな、これも何かの縁だ、君も一緒に来ると良い。」


ジョセフがアリサの横を横切り、アヴドゥル、ホリィが警察署に入ってく。
アリサは少し遅れて三人の後ろを付いて行った。



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