Short Stories
□小さな想い
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メイカーが地球にいた時に知り合ったみさに再び会いに行くのを理由に、コスモスを連れて地球に行って、それから戻って来てから数日が経った。
キンモク星は平和そのもの。
コスモスはいつもヒーラーと共にいる。
今も、庭でヒーラーと一緒にお茶やお菓子を用意して、ゆったりとした時間を過ごしていた。
メイカーは自室でその様子をじっと見ている。
「メイカー?」
「っ!!」
そうしていると、同じ部屋にいたファイターに後ろから肩に手を置かれ、名前を呼ばれて驚いた。
「何?どうしたの」
勢いよく振り向かれたものだから、ファイターも驚いた。
「いいえ。なんでもありません」
メイカーはいつもの丁寧な口調で、ファイターに言った。
ファイターが自分に近づいてくる気配さえ掴めないほど、自分は想いに浸ってしまっていたのだろうか。
自分は、まだあの想いを引きずっているのだろうか。
自然とコスモスに目が行ってしまう。
そして、彼女の雰囲気に浸ってしまう。
(気持ちを切り替えて行かなくては……)
メイカーは自分に言い聞かせるのだった。
∽ ∽ ∽
それから数日が経ち、メイカーは自室に籠っていた。
ファイターやヒーラーはいない。
今、二人は火球王妃の護衛に当たっている。
キンモク星の中心に立つ火球王妃は対談のため、隣国に赴いている。
今回、ファイターとヒーラーはその彼女に同行している。
メイカーはこの城に残って、警護に当たっているのだ。
そうして、自室で黙っていると、部屋の扉が開く音が響き、メイカーはそちらに目を向けた。
「あ、いたいた」
扉を開けて顔を覗かせたのはコスモスだった。
「どうしました?」
「うん。なんとなく…ね」
コスモスが作り笑顔で部屋に入って来た。
そして、そのままヒーラーのベッドの上に座った。
コスモスはまだ太陽が差す、その窓の外を見上げた。
青い空がまぶしいほど、今日は晴れやかだった。
その太陽の光に照らされているコスモスの表情はどこか淋しげだ。
メイカーは、そのコスモスの正面に椅子を持って来て、そこに座った。
「淋しいですか?」
「え?」
メイカーからの言葉にコスモスは目を丸くした。
そして、先日、地球に赴いた時に知ったメイカーの気持ちを思い出した。
「あ……え…と……」
目に見えて固まったコスモスの様子を見て、メイカーはクスクスと笑い始めた。
コスモスは急に笑われてしまったので、固めていた体を溶かして、少し照れた。
「気にしないでください」
「あ……うん…」
メイカーが何を言いたいのかが分かったので、コスモスは苦く頷いた。
だが、コスモスは思った。
キンモク星に来てからというもの、自分と、そしてヒーラーが暇であれば、いつも一緒にいる。
今回のように、火球に伴って遠征に行っている時も、淋しく思えばすぐにスターライツの部屋に入ってヒーラーのベッドに座って窓の外を見る。
今日のようにこの城に残っているメイカーはこんな自分の行動をどう思っているのだろうか。
「本当に、気にしないでください」
メイカーは考え込んでしまっているコスモスに近づいて、彼女の頭を一つ撫でた。
そうすると、メイカーは立ち上がり、退出するのか、扉の方に向かって歩き始めた。
「メイカー?」
「待っていてください」
「……うん」
整理できたはずであるのに、いざメイカーと二人きりになると、後ろめたさが表出してくる。
メイカーが退出した後、コスモスは大きく息を吐いた。
無意識のうちに緊張していたようだ。
コスモスは力を抜くと、座っているヒーラーのベッドに横になった。
そして、布団に顔をうずめる。
(ヒーラーの匂いがする)
それだけで、緊張や淋しさから解き放たれるような気がした。
(早く帰って来て欲しい……)
ヒーラーのことばかり考えるというのは、メイカー的にはどんな気分なんだろう。