沈黙の儚き風

□story13
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 朝の光を受けて、目を覚ます。

 さらさらな髪が少し顔にかかってすやすやと隣で眠るもう一人の人物を見る。

 とても愛おしくて、

 手に入らない人――…

 そう思って彼女を見つめていると自然と涙がこぼれてくる。

 目元から溢れ出てくる雫を拭っても拭っても、一つ、また一つと止め処なく溢れてくる。

 隣に眠るその人を起こさないように、声だけは出さないように我慢する。

 だが涙が出ると全身に力が入り、自然と肩で息をしてしまう。

 その振動に気付いたのか、隣に眠る人物がのろのろと瞼を開き始める。


 隣で起き上がり、少し大きめのシャツに身を包み、顔をその手で覆い隠している少女が視界に入る。

『時雨?』

 大切な少女が、声を押し殺して、肩を震わせて泣いている。

『時雨、どうしたんだい?』

 少女に呼び掛けるその人物は、上半身を起こすと、亜麻色の短髪を一度掻き上げてからそっと顔を覆い隠している少女の手に触れる。

 そして、その手を握って覆いを解いた。

 やはり少女は泣いていた。

『怖い夢でも見たのかい?』

 両手を掴まれたまま、少女は声を発さず固く目を瞑って首を横に振った。

 少女からは止め処なく涙が流れている。

 怖い夢を見たのではない。

 夢は見ていない。

 昨夜も幸せに包まれて眠ったからだ。

 しかし、朝には淋しさを感じる。

 だから涙が止まらないのだ。



 愛しているから――…



 何度も理性で止めようとしたこの気持ちを少女は結局止めることができなかったのだ。

 毎日、学校で会う度にその気持ちは募るばかり。

 お互い、一人暮らしなので最近では寝泊りすることは当たり前になっている。

 少女の家の時もあるし、相手の家の時もある。

 勉強をして、

 ゲームをして、

 ご飯を食べて、

 入浴して、

 そして、眠る――…

 当たり前となってしまった日々。

 だけど、朝はいつも淋しさに包まれる。

 きっと、こんな生活をやめてしまえばもっと清々しい朝を迎えられるのかもしれない。

 だが、止められない。

 片時も離れたくない。

 ずっと傍にいたいのだ。

『はるか……、ずっと傍にいて』

 そう言って、少女は彼女の胸に飛び込んでさらに泣き続けた――…

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