昏い銀花に染められて…
□the present 19.
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「メイカー?」
意外な人物だった。
「何?どうしたの?」
メイカーから声を掛けてくるなんて。
ずっと、かぐやのことを疑っていた人物。
それは今も変わらないだろう。
隙のない視線を向けてきている。
「いえ。あなたに聞きたいことがありまして」
「………」
かぐやは視線を鋭くして身構えた。
メイカーは前夜にヒーラーからヴェーランスのことと、かぐやの前世のことを聞いたそうだ。
ヒーラー=夜天がカグヤだと確信を得て喜んでいた。
そのことはわざわざ伝える気もないが。
「何を聞きたいの?」
「ヴェーランスの狙いとランカウラスのことを」
ヴェーランスの狙いは月の一族を滅ぼすこと。
それは、ヒーラーにも言ったことなのだが…。
「ランカウラスは、元々はエナジーを奪い取る毒花よ。それをヴェーランスの力でスターシードを現すように改良していたの」
「なぜ、スターシードを?」
「言ったでしょう。月の一族を根絶やしにするため…銀水晶の持ち主、すなわちセレニティを探しだすため」
スターシード。
それはすなわち、戦士のハート…力の根源となる水晶のこと……。
「もういいかしら?」
かぐやはここらへんで話を終えたかった。
これ以上話してしまったら、今の自分の状況まで知られてしまいそうに感じたからだ。
(ガーネットを取り戻すために……)
ヴェーランスとの取り引きがあるから。
自分は今、話しているこの戦士の仲間かもしれないセーラームーンを、非情にもヴェーランスに差し出そうと考えているのだ。
まだ、その人物を特定できていないのだが…。
頭の中が混乱している今、下手に話すと墓穴を掘りそう…。
「えぇ。大分、今の状況が飲み込めました」
「そう」
「夜は闇が深い。またヴェーランスがいつ襲ってくるかも分からない。それに風も冷たい。早く帰ったほうがいいですよ」
「それはどーも」
メイカーは去って行った。
(まだ、疑っている?)
最後の言葉は社交辞令のようなものだろう。
メイカーの鋭い視線は変わらないままだった。
せっかく澄んだ夜空を見上げて、気持ちをリフレッシュさせようと思っていたのに、それどころか気持ちが萎えてしまった。
かぐやはため息をつきながら、帰路につくことにした。
その様子を草陰から、ヴェーランスが見つめていた。
ガーネットの大きな瞳を光らせながら……。
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